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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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乗り越える試練-1

葵が手に力を込めると、光輝く杖はいっそう輝きを増して・・・その背中には真っ白な翼が姿を現した。






「翼・・・?・・・っまさか、あなたは・・・・」






目を閉じた葵が川底へと杖をついた。そしてそのまま頭上へかかげる。光の柱が勢いよく立ちあがり、空へと向かって伸びた。やがて拡散した光の粒が燃えさかる町へ・・・森へと降り注ぎ・・・・火を奪い、熱を奪って行った。






怪我をしている人々へ光の粒が触れると、一瞬にして傷が治癒され・・・煙を吸ってしまった民の体内も浄化していく。






「・・・この力は・・・・」






民の視線がいっきの葵へと向けられ、天使のような美しい葵のその姿に・・・そして神のような偉大な力を前に茫然と立ち尽くしていた。






葵が杖を下げ、目をあけると・・・
目の前にいる大和が一歩進み出た。






「あなたが・・・この世界の・・・王だったのですか・・・?」






「・・・はい、申し訳ありません。
もっと早くにこうしていれば・・・」






いくら王といえども、無機質な建物や物は再生することが出来ない。多くの民の住居が消失してしまったことに変わりはないのだ。






「何を言ってるんです、
こうして皆、命があるのは・・・あなたのお力のおかげなのですから・・・っ!!」






「そうだそうだっ!!家なんてこれから皆で協力して建て直せばいいんだっ!!」






民たちは口々に命あることへの喜びと、王が自分たちのために動いてくれたことへの感謝を叫んでくれた。






(ここの民はとても素晴らしい・・・何ものにも負けぬ強い心をもっている・・・)

葵は微笑ましく彼らの笑顔を眺めている。すると・・・






「さっきはすみませんでした、お嬢さん・・・だなんて・・・俺、大和って言います」






握手を求めてくる大和に葵は優しく微笑んで彼の手を握った。






「助けてくださってありがとうございました。私は葵と申します」






その笑顔に大和の顔はまた赤みを取り戻していく。不思議に思っている葵が首を傾げていると、彼の傍にいた男が大和の頭を豪快になでている。






「王さまに一目惚れってのは・・・前途多難だなこりゃっ!!」






きょとんとしている葵は大和の顔をのぞきみた。



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