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【サイコ その他小説】

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「あ、いや、でも軽く腕を振るっただけじゃなっかたかな?少なくとも私にはそう見えたんだけど」

「その通りよ。軽く腕を振るっただけね」

「いや、おかしいよそれ。それ位で人が殺せるわけ無いじゃない?熊ならまだしも、人間では無理」

そうです。ムシケラでもあるまいしそれくらいで人間が死ぬわけがありません。だからあれはきっと手品です。今教室に戻れば先生と小さな同級生が大笑いしているに決まってるんです。

「へぇ」

しかし、なぜか級長は薄く笑います。思わず空を飛んでしまいそうなくらい綺麗な笑いです。

「貴方はあれが人間に見えるのかしら?」

おかしな質問です。あれが人間以外の何に見えるのでしょうか?級長は私の心の中を察したのでしょう。ゆっくりと口を開きます。

「あれはね、人外よ。私もだけどね」

不意に下腹部に熱を感じます。見てみると真っ白いものが深々とへその付近に突き刺さっています。

何でしょうかこれは?どうしてこんなものが刺さっているのでしょうか?疑問です。深い深い疑問です。どこかに私のことを狙った殺し屋でも潜んでいるのでしょうか?

ああ、熱いです。とてもおなかが熱くなってきました。

「くすっ、馬鹿ねぇ。自ら私の秘密基地に入ってくるなんて」

秘密基地。その言葉が少し滑稽です。こんなハイエンドクラスの人間でも秘密基地を作ったりして楽しむものなのですね。

それにしても熱いです。いったい何時私のおなかは傷つけられたのでしょうか?

「いいでしょう、これ?私が作ったのよ」

ぐい、と級長は白いものを引き抜きます。それは釣り針のように返しが付いており、引き抜く際に私の内臓も引っ張り出していきました。

私は納得しました。なるほど、級長が私のおなかにこれを刺したのですね。謎はすべて解けました。金田一少年になった気分です。

「骨を削って作ったの」

自慢のコレクションを見せ付ける子供のように、級長は微笑みました。

「あれ?えっと…このままじゃ私…死ぬのかなぁ?」

そうです。こんな内臓が飛び出した状態が長く続けば、きっと死んでしまいます。私はいきなり不安になりました。

「大丈夫よ」

と、そう級長が言ったので私は、じゃあ大丈夫か、と軽い安堵を覚えます。だってこんな才色兼備である完璧人間である級長が言うんですから。間違いありません。

三秒後、私は死にました。



先生を殺した矮躯の生徒はやっぱり捕まりませんでした。まあ、今まで何人の人を殺害してきたのだからこれくらい捕まる訳が無いでしょう。その日、学校は臨時急行となりなした。その上、死体の処理や生徒の安全を危惧して、三日間学校は休校になりました。

そして三日後の朝です。二年四組には見慣れない置物が置いてありました。厳密に言えばそれは『置物のような物』ですが。

それはどの様な物だったかと言うと、一言で言うと青い人間です。

いったん死体の頭を落とし、逆さ釣りにして血抜きをするのです。そして血の代わりに青いペンキを流し込みます。皮膚の上からでも十分体の内側の青が確認できます。少しこぼれた腸もしっかり青が塗られています。

そして丁寧に縫いつけたれた頭にもやはり青色が。大量にペンキが詰め込まれたのか眼球とまぶたの間からペンキが溢れています。一筋零れ落ちたそれはまるで涙のようでしたが、その涙を美しいと思った人間は一人もいないと思います。むしろ苦痛のために流した涙と思ってるでしょう。それほどに『置物のような物』の表情は苦痛に満ちていたのですから。

もちろん教室からは悲鳴が続出です。しかしそれを製作した、二年四組の級長であり、また同時に美術家である彼女はそれを最高の賛美だと解釈し、優雅に微笑みました。

「うふふ」





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