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funny title
【サイコ その他小説】

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funny title-2

「これは君なのね?そーなのね?」
ああん、と彼は気だるそうに顔を上げて
「そーだよ」
と、これまた気だるそうに答えた。
「わざわざ、それを言いに来たの?」
「そうよ」
と返事をすると、彼はやっと背筋を伸ばした。ようやく私の話を聞いてくれるようになったのだろうか。
「あなた、自分が何をしたか分かっているの?万引きは犯罪なのよ?」
気の迷いで思わずやったということはないだろう。なんせ私が彼を付け回したこの一週間で三階も万引きをしている。
「いいじゃん、べつにさぁ、それくらい皆やってるし」
「皆やっているからと言って許されると思っているんですか!」
私が叫ぶようにそう言うと、彼は然もうるさそうに顔をしかめて、
「うるっさいなー。お前にメイワクかけてねーだろがい!」
「へ…?…………」
私は思わず絶句した。なんて人だろうか。私は彼に自分が犯した罪を反省してほしかっただけなのに。なぜ、なぜ彼が怒るのだろう?これが噂の逆ギレなるものなのか?
「もう帰るぜ!じゃあな!」
と言って彼は私に背を向けてさっさと歩き出した。
「ちょ、ちょちょちょっと、待ってください!ちょっと!ねえ」
私が声を張り上げると
「ちっ」
などと、わざとらしく舌打をして
「なんだよ!」
明らかに俺はイラついてますよー、って感じに彼はこちらを振り向いた。
そこで間髪入れずに私は、銃刀法違反に引っかからない5センチのナイフを携帯を持った反対の手にしっかり握り、彼の右手を突いた。
「……!んっ、ああ!?」
右手はポケットに入っていたのでとっさにかわすことが出来なかったのだろう。ナイフは右の拳に深く刺さっていた。
それを引き抜いて、右拳の少し上、手首を今度は貫く。それを引き抜いて、右手首の少し上、肘の下を貫く。それを引き抜いて、今度は肘を突こうか、と思っていると
「うわあああ!!」
彼は突然叫びだして、いつの間にかポケットから引き出した左手で私を突き飛ばした。
「な!なあんな、なな何なんだよ」
思わず尻餅をついた私は、とっさにその言葉の意味を理解することは出来なかったが、『何故、このようなことをするのですか?』という意味を含めているのであろうことが分かるのには余り時間がかからなかった。
「痛いなぁ。何するのよー、もぅ」
お知りのあたりについた砂を両手で払いながら立ち上がると、なぜか今度は彼のほうが尻餅突いていた。何をしているんだろうか?ふざけているのだろうか?
とにかく聞かれたことを答えよう、と私はそう考え、
「私がこれだけ反省を促しても、あなたに全く反省の色が見えないから。ちょっと、それなりの措置をとろうかと思いまして、ね」
言い終わると私は、携帯を仕舞い、空いた手で倒れこんだ彼の肩を掴んだ。
「ちょっ、待てよ!何するつもりだてめぇ、やめろ!」
叫ぶ彼もお構いなしに私はナイフを振り上げ、右肩に向かって振り下ろす。隣で彼が大声で叫んでいたが気にせず、ナイフを下に下に切り進めていく。
だらだらと血が出て私の手を汚したが、なぁに、それくらい彼が万引きするのを止めてくれることに比べれば、どうってことはない。
この一週間、彼が万引きの際利用したのはこの右手だけなのだ。だからこの右手さえ無くなれば、彼は万引きを止めてくれるはずだ。
私はそう信じ、彼の右手を傷つけ続けた。いつの間にか彼は気絶していたが、全くお構いなしに、全然気にすることもなく、一心不乱にナイフを振り続けた。
「痛いでしょうけどがんばってね。これはあなたの為なんだから」
この世に悪い人間はいない、悪いのは犯罪だ。全くもってそう思う。この人は全く悪くない。悪があるとすれば、それはこの右手だけだ。
ナイフで他人を意味もなく切りつける者がいれば、そのナイフを奪えばいい。
拳銃で他人を意味もなく撃つ者がいれば、その拳銃を奪えばいい。己の拳で他人を意味もなく殴りつける者がいれば、その拳を奪えばいい。
そうすれば、切りつけられて痛い思いをする人も、撃たれた痛い思いをする人も、殴られて痛い思いをする人もいなくなるし、また、他人を意味もなく切り付けてしまった者も、他人を意味もなく撃ってしまった者も、己の拳で他人を殴りつけてしまった者も、罪を重ねることは無くなる。
良い事だらけだ。これが「罪を憎んで、人を憎まず」ということなんだろう。
彼の腕が粗方、原形を留めなくなったので、私は腕を止めた。
「ふぃー、疲れたなあ」
額の汗を拭い、ナイフを入れ物の中に仕舞って、私は帰ろうとしたが
「こんな所で眠ってたら無用心だよね」
せっかくもう万引きをする心配が無くなったのに、不良にでも襲われたら大変だ。
と、白眼を剥き、唇が真っ青になった彼のことが、ふと心配になって、しかし彼の家の住所を知らなかったので、近くの公園まで運んであげることにした。
起こそうかとも思ったがそれもなんだか悪い気がしたので、がんばって背負って公園のベンチに置いてきた。ここなら大道路にも近いし、多分大丈夫だろう。
「あーあ、すっかり遅くなっちゃたなー。早く家に帰らなくっちゃ」
結構汗も掻いたし、早くお風呂に入りたい。私は足早に帰ることにした。


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