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19歳
【ラブコメ 官能小説】

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後奏-3

 ♪ fly away now fly away now fly away…

 ナオくんは、バイトから帰ってくるとすぐ、歌声に気付いたのか、真っ直ぐにこっちへ
来て風呂場の入り口に顔を出した。

「ユイ、お前、何やってんの?」

 全裸のあたしは、目を瞑って、からだ全体でリズムをとりながら歌い続けた。

 ♪ fly away now fly away now fly away…

「こんなに氷買ってきて、どうすんの?」

 ゴーグルは嵌めたまま、あたしは、ようやく歌をやめて、ヘッドホンを外した。

「停電だって。まったく冗談じゃないってのよ」
「なんで停電? 電気代、ちゃんと払ってるぞ」
「違うわよ。近くで工事があるんだってさ」
「なんだ。それなら、もうすぐ電気くるだろ」
「それがさ、明日にならないとダメなんだって…」

 あたしは、しれーっと、ウソをついた。ここで、ナオくんが、どういう反応を示してく
れるのか、それが、楽しみで楽しみで仕方がないんだよね。ま、これが、気心が知れた者
同士の間合いってヤツですかぁ? あたしって悪いヤツよね。あはは。

「なぬぅ、じゃ、どーすんだよ、この暑さ」

 ん、もぉ。さすがナオくん。あたしが求める答えが何なのか、あらかじめわかっていた
かのような天然丸出しの模範解答。思わずぎゅっと抱き締めたくなるほど愛おしさが込み
上げてくる。でも、それをじっと我慢して“演技”を続けた。

「だからぁ、あたしだって困ってんでしょ?」
「それで、その氷?」
「そ、今日は、アイスプレイよ!」
「何だよそれ?」
「何? ナオくん、やったことないの?」
「だから、何だよ?」
「んー。もー、わかってるクセに…」

 ナオくんが、あたしの顔の辺りをじっと見つめている。お、やっぱり気付くのかな?
でも、勘がいいのって、アノ時だけのような気もするし…。 

「あ…ユイ…髪切った?」
「まぁね…」

 急に真顔になる、あたし。心の中で、気付いてくれてヨカッタと思ってるのは内緒。

「どした? 心境の変化?」
「(小声で)失恋100日記念…だったりして…」
「何? シャワーがうるさくて聞こえないよ」
「…えーと…夏向き…そう…ナツ・ムキよ!!」

「ふーん、いいんじゃない?」

 髪が短いあたしの姿を見せたのは初めてだったけど、ナオくんに、そう言われて、すご
く安心したし、もちろん、とても嬉しかった。

「ありがと、ナオくん。あはは」

 間違いない。探していた間は、どうしても見つからなかった、ジグソーパズルの最後の
1ピースを見つけることが出来たのは、こうして、ナオくんという相手に出会えたからだ。


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