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19歳
【ラブコメ 官能小説】

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回想Bパート-2

 隊長のことを男性として意識したのは、部活を引退して、本格的に受験勉強を始めなけ
ればならなくなった頃だったかな?
 
 初めは、単なる“憧れ”だったんだと思う。アイドルとか映画俳優とかスポーツ選手とか
そういう人たちに感じるような、よくあるヤツ。とにかく、最初のステージを観たときの
インパクトがスゴすぎて、一発で熱烈なファンになっちゃってたから。
 でも、実際に会って、フツウに話をして、一緒に過ごす時間が増えて、お互いがどんな
人なのかがわかって来だすと、やっぱり、そういうのとは違う気持ちが芽生える。
 あたしの性格上、学校の勉強や部活を放り出してまで“追っかけ”をやったり、好きなこ
とにのめり込んじゃうようなことはしなかったから、隊長や周りの人たちと過ごす楽しい
時間が、フツウよりも大切なものとして感じられてたっていうのもあるかもしれない。

 高校3年の2学期になってすぐくらい、まだ、夏の暑さが残ってた時季だったかな? 
イベントの打ち上げが終わった夜、たまたま車で来ていた隊長に、家まで送ってもらった
ことがあった。

 今は学校からひと駅のところに部屋を借りてるけど、あたしの実家は北に山をひとつ越
えた郊外にあって、いつもは、ひとり寂しく電車で帰るんだけど、ひょいっと、そういう
話をしたら、乗っけてってくれることになった。
 隊長は、まったくお酒を飲まない人で、車で来ているときは、酔っぱらいをねぐらまで
連れて帰ってくれる、“おくり大神”のような役割を担っているのは知ってたけど、自分が
隊長の車に乗せてもらうのは初めてだった。
 その日は、車で来ていた素面の人が、もう一人いたから、酔っぱらいは分乗することに
なって、あたしの分の席が空いたみたいだったけど、あたしは、大人の仲間入りをさせて
もらったような気がして嬉しかった。

 隊長は、あたしを助手席に乗せて、比較的近くに住んでいる後部座席の二人の酔っぱら
いを家まで届けたあと、送られて帰る道すがら、お酒の話をした。

 まったく飲めない体質だというわけではないらしい。限界がどのくらいなのか、色んな
種類のお酒で試してみたこともあるんだそうだけど、その結果、自分は、生まれつきお酒
との相性が悪いということを心底から悟ったそうだ。
 たくさんお酒を飲んで酔っぱらうと意識がハッキリしなくなってその間のことを全く憶
えていなかったりする人なんかが周りにもいて、実に楽しそうにお酒を飲んでるように思
えるんだけど、自分は、酔っている間のことを却って鮮明に憶えているようなタイプで、
限界を超えて飲むと吐いてしまうか寝てしまうかのどっちかだから、ちっとも面白くない
ということらしい。
 お酒は、普段とは違う精神状態をつくって楽しむためのツールなのに、自分はその効能
の半分も満足に享受することができないっていうのが、とてつもなく悔しいのだそうな。
だから、お酒を飲むのをやめたんだって。味や香りはキライではなかったみたいだけど。

 で、どうしてそんな話をしたかというと、あたしが仲間内に入ってきたのは、“同志”が
できたみたいで嬉しかった、ということを言いたかったらしい。そういえば、お酒を全然
飲まない人って隊長と未成年のあたしくらいなものだったよなぁ、と、お酒を飲まないの
が当たり前なあたしは、今さらながらに思ったものだ。
 隊長は、お酒を飲まなくても、常にハイテンションな人だったし、喋りだすと止まらな
くなる、“マッドなマシンガントーキー”だったので、そんな、とてつもない悔しさを抱え
ながら飲み会に参加してたなんて、全く想像の外だったって言うか、笑っちゃうよね?

 別に何てことのない内容の話だったんだけど、妙に頭に残っちゃって。隊長とふたりき
りで話したのって、それが初めてだったっていうのもあるし、わざわざ遠回りして送って
くれたっていう“自惚れ”みたいなものもあったかもしれない。今でもハッキリと憶えてる
なんて、ホント笑っちゃう。


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