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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-4



3月15日。小学校卒業式。


5年生の楽器演奏で卒業生である瑞稀たち6年生が入場する。
校長先生、来賓の話が終わると卒業証書授与となる。
一人ずつ名前を呼ばれ、返事をして席を立ち、壇上に上がる。
受け取ったら下手の階段を降りて、担任に渡して筒に入れてもらう。

この動作を50人程繰り返したとき、拓斗の名前が呼ばれた。
その時、ずっと俯いていた瑞稀が顔を上げた。
視線の先には、緊張なんかせずに堂々と壇上に向かう拓斗の姿。
今日、瑞稀は一回も拓斗と話していない。否、話せなかった。
出来るだけ、姿を見ないようにしていたが、さすがにこの姿だけでも目に入れておきたかった。

「・・・・やっぱ・・カッコイイなぁ・・」

自嘲気味に、小さく呟いた言葉が空気に消えた時。拓斗が担任から渡された筒をもって席に戻るところだった、
目が、偶然会う。
今まで、そんなことは何十回もあったはずなのに、今更恥ずかしくなった瑞稀は慌ててうつむくことでその視線を逸らした。
拓斗は席に戻って、無表情だったが、一瞬だけ顔を曇らせた。

更に10人位呼ばれると今度は秋乃の名前が呼ばれた。
小さい返事だったけれど、こちらも拓斗と同じで堂々としていて、とても凛々しく見えた。
淡々と証書を受け取り、担任に筒に入れてもらい、それを受け取った秋乃は席に戻った。
1年間しか居なかったが、小学校生活最後をココで過ごせたことを満足している秋乃は晴れやかな表情をしていた。

「八神瑞稀」
「っ、はい!」

自分の名前が呼ばれた瑞稀は、ひと呼吸おいてから返事をした。
気持ちを、落ち着ける為に。
二人のように、堂々として、ココから卒業しようと。


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