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画面の中の恋人
【純愛 恋愛小説】

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画面の中の恋人-15

 夜になれば必ず彼と話ができる。そう思えば、何もない日常生活にも張りが出た。だらしない生活をしていたら、もしも名無男と共に生活するようになったときに悪い気がした。だから、どんなに疲れていても家事は以前よりもきちんとするように頑張った。料理も手を抜かず、栄養のバランスを考えたものを作るようにもなった。それがすべて夫のためではなく、名無男のためだというのが皮肉ではあるけれど。

 夫の態度は一貫して変わらない。顔を見ても話すことはなく、目も合わさず、たまに2階で物音がすると「ああ、いるのかな」と思う程度だった。少しだけ罪悪感のようなものを感じたが、だからといって名無男との関係にブレーキをかける要素にはならなかった。

 日がたつごとに、どんどん気持ちが惹かれていくのがわかった。手の届くところに相手がいたら、迷わず抱きあっていたに違いないと思えるほど、乃理子の気持ちは燃えあがっていった。

メッセージを交換するようになって3カ月ほど過ぎた頃、星座か何かの話の流れでお互いの誕生日の話題になった。乃理子の誕生日は2週間後の10月15日だというと、名無男はびっくりするようなことを言い出した。

『ミコさま
 10月14日の誕生日、僕にお祝いをさせてもらえないだろうか。少し前に、大きな花束を恋人からもらうのが夢だって言っていただろう? あれを実現させてあげたい。もちろん、直接会って渡すつもりだ。それとも、やっぱり会うのは難しいかな? 名無男』

 名無男と……会う? 心臓が壊れそうなくらいバクバクと音をたてた。文字だけのやり取りで、こんなにも好きになってしまった。会いたくないわけが無い。でも……不安が無いわけじゃない。会ってしまったことで、せっかくのふたりの関係が壊れてしまったら……またあの張りの無い毎日に逆戻りなんて絶対に嫌。

 ぐるぐるといろんな考えが渦巻く。少し考えさせてほしい、と返信して、いつかの名無男と同じように1週間ほど悩んだ。

 いざこういう事態になると、ハルカたちにも相談する気になれない。否定も肯定もされたくなかった。大切な人からの、大切な誘い。いい加減な気持ちで答えたくない。自分だけでしっかりと答えを出したかった。


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