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〈聖辱巡礼〉
【鬼畜 官能小説】

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〈聖辱巡礼〉-3

今まで梨沙子の彼氏に“選ばれた”男子といえば、スポーツに秀で、学校の女子の声援を浴びるサッカー部員だったり、すれ違う女子の視線を奪い取るような、いわゆるイケメンの男子であった。

自分と同じく、異性の羨望の眼差しを浴びる男子にしか梨沙子は魅力を感じなかったのに、正人はそのどれにも当て嵌まらなかった。
真面目・実直、それしか取り柄のない正人に、何故心が騒ぐのか、まだ梨沙子には分からなかった。


『俺、梨沙子の事、ずっと好きでいるから……』

「!!」


脳天から脊髄を通り、爪先まで電流が走るのを梨沙子は感じ、直立不動のまま歩みを止めた。
正人も立ち止まって振り返り、驚きの表情のまま固まった梨沙子を見つめていた。


『じ、じゃあね!』


極度の緊張感に耐えられなくなったのか、正人は梨沙子を一人残して駆け出し、そのまま雪のカーテンの中へと消えた。
梨沙子の耳に聴こえるのは、自身の鼓動の音のみ……本心では正人の事を意識していたのかと思える程の、痛くて激しい鼓動……。



『いよぅ!見てたわよ?熱いっスねえ』


立ち尽くす梨沙子の背後から声をかけたのは、同級生の川又友(ゆう)だった。
友も梨沙子に負けず劣らずの美少女だ。
切れ長な瞳に通った鼻筋は、大人びた雰囲気を醸し出している。
梨沙子の唯一の友達……友もまた、他の女子達に疎まれてはいたが、友は学校の男子を恋愛対象に選ぶ事はなく、いつも大学生や社会人とだけ付き合っていた。
理由は単純。
彼らの財力が目当てだからだ。



『まだ“あんなの”と付き合ってるんだ?軽蔑するわ〜』


正人を蔑む友達の台詞に、梨沙子は我に帰った。
どう見ても自分には釣り合わない……友の言葉は正人だけでなく、自分にも向けられたものだ……自尊心がムクムクと膨れ、それを傷つける“存在”を排除したい衝動を起こさせた。



「だから付き合ってないってば!アイツがしつこいだけなんだから!!」


正人を蔑む言葉を吐いても、梨沙子の心は痛まなかった……黙っていても、魅力的な男性の方から近付いてくる梨沙子にすれば、一人の平凡な男の事など些細な事だ。
それよりも、友達の友に酷い言われようにされる正人に、トキメキを覚えた自分が恥ずかしく思えていた。


「私って優しいから、ハッキリ断れないからさ、自然消滅を狙ってるの」

『キャハハ!そっちの方が可哀相なんですけど』


正人の地位を下げる事で、梨沙子は自尊心を保とうとしていた。
自分の美貌に釣り合う男性しか認めない……今までの恋愛は全てそうだった。
自分の可愛らしさを引き出す仕草も、男性に我が儘を納得させる怒り方も、梨沙子は経験で知っている。
男性を手玉に取りながら生きてきた梨沙子には、当然の事ながら女友達は居なかった。その中でも唯一の友達が友だった。
その友に馬鹿にされるような男子など、どうして付き合えようか?
もう、どうでもいい存在まで落ちたのだ……。


『智志なんてどう?アイツなら梨沙子と釣り合うと思うけど?』

「あ、アレね。バスケは上手いけど勉強がねえ……ハッキリ言ってバカ?」


完全な上から目線での男子生徒の話に盛り上がりながら、二人は帰宅の道を歩いていく……梨沙子が自宅に着く頃には、既に周囲は暗闇に包まれていた……。



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