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「未来日本戦記」
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「未来日本戦記」-8

−東−
「…第三部隊もやられたみたいだな」
第四部隊の隊長は、前からやってくる学生服の男を見てぼやく。
戦いの中を抜けて来たというのに、きちんと着こなした学生服は汚れも、乱れさえもしていない。
「いいか!あいつの『越えし力』が何なのかは分からない!だが、勝機は我々にある。怯むなぁ!」
『おぉおお!!』
第四部隊の兵全員が刀を掲げ、叫ぶ。
そして越えし者、心に攻撃を仕掛けた。
まず一人目。
「やぁああ!」
「……」
それを、目を閉じたまま最小限の動きで避ける心。
「待て、東京の者」
心の声に、兵が止まる。
心が忠告をする。

「俺は『殺さず』を目標にしているが…」
その時、心に攻撃してきた男の刀が、根本から折れる。
「刀がこうなっても闘志を持って攻撃してくる者なら、俺は容赦なく切り捨てる。それが武士に対する礼儀だからだ」
多数の兵の中に、口を開く者は一人もいない。
「我流居合術使い、日蔭心(ヒカゲシン)、参る」
心は鞘に納まった刀の柄に手をかけ、走り出す。
兵の陣形が崩れる。
「ひ、怯むな…行けぇ!」
戦う者、逃げる者の二つに部隊が分かれる。
「うわぁああ!」
恐怖に顔を引き攣らせた兵が刀をあげる。
そして短い金属音。
振り上げた刀の刃が消えていた。

「あ…あ、あ、あ」
「退け」
一言そう言い、心は前に進む。
そこに、この部隊の隊長と五人の兵が前を塞ぐ。
「日蔭心だったな、確かに我々が一人ずつでは倒すことできない力の持ち主だ」
五人の兵が心の周りに散る、正面に隊長を置く形。
「だが、いくら居合の達人とは言え、多くの敵を同時に戦う事はできないだろうな」
心を囲う円が小さくなり始める。
「侵入者には容赦しない、死んでも化けて出るなよ!」
六人が心を襲う。
まず、後方より襲う刀。
心は鞘を肘で押して後ろを上げ、先端で止める。
左より迫る二本の刀。
相手の刀の柄を腕で抑える。

正面にある刀。
我流の居合で叩き壊す。
右からくる二つの斬撃。
居合をした刀で受け止める。
「…なまくら刀を使っていたなら、全て叩き折れたのだがな」
五本の刀を抑えながら心は言う。
「だが、これでもう居合はできないだろ?」
「否、俺の居合に弱点などない」
心の鞘、刃走りする所が光る。
その光が残りの刀を全て破壊する。
「なっ!?」
六人に心は言った。
「古来の居合術は確かに多勢には向いていない。たが、俺の居合はそれを打破した」
隊長が確信を持ち、心に問う。
「それがお前の『越えし力』か」
「肯定だ」
心は鞘を掲げ、言い放つ。

「俺の力は『鞘があれば気の刃で居合できる』事だ。それを扱うのに手を使う必要もない」
隊長は、折れた刃を拾う。
「全く、やっかいな力だ」
それの端と端を持ち、目の前で構える。
「…まだやるか」
「た、隊長!」
「総員退避させろ」
五人の兵は隊長を抑えようとする。
「駄目です!」
「…いいか?俺は、東京で生まれた男だ。そこを守るために命を張らなきゃ、いったい何処で張るんだ?」
「しかし…」
「どうしても退けない事ってお前にもあるだろ?」
一歩前に出る。
それを心眼で見て、心は抜刀から納刀の構えにする。
居合の構え。
気迫は真剣そのもの。

「……」
隊長は、心の刀を見て思考する。
(刀は納まっている。気の刃は、初撃の刃の後に来るはず。初撃を打たせなければ、俺の勝ちだ!)
そして、一足飛びに距離を詰める。
心は刀を抜刀し始める。
(今だ!)
隊長は足で心の刀の柄を押さえる。
(勝っ…)
その時、抜けかけの刃があるというのに、鞘が光り何かが自分の折れた刃をさらに折った。
「な…」
「憶測で物事を決め付けるな」
そして実体の刃が首元に放たれる。
「それが敗因に繋がる」
「…か…はっ」
喉にある刀は返され、峰で打たれていた。


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