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「未来日本戦記」
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「未来日本戦記」-6

「血、ダメなの?」
龍に聞く。
「どうしてだ?」
「血が好きなの…」
「…これからの仲間を殺す訳には行かないからな、我慢しろ」
血が好きと言った瞬間、漆の瞳が人殺しのモノに変わったのを見逃さなかった。
(あいつ…実はヤバイ奴なんじゃ?)
しょんぼりしている漆を撫でながら、龍はルールを決めた。
「相手に参ったと言わせる。戦闘不能になる。この二つでどうだ?」
「いいよ」
「同意」
舞と心は何も言わず賛成する。
しかし、漆はしばらく何も言わなかった。
「漆」
龍が漆に向かってある事を約束する。

「お前が俺を倒したら『69』に行ってやる」
風を切る音と共に、漆の顔がこちらに向けられる。眼は光に満ちていた。
「本当!?」
「俺を倒したら、だけどな」
「僕、頑張る!」
その様子を見て舞は、心に小声で尋ねる。
「心、あの二人ってそういう趣味?」
「いや、漆だけだ」
「あ、やっぱりソッチの気がある人がいるのね…」
心は、龍の心を代弁するように語る。
「おそらく龍は負ける気がないからあのような約束を持ち掛けて、漆のやる気を出しているのだろう」
「負けたらどうするつもりなんだろ?」
心は刃と鞘が離れないように、刀を紐で縛りながら言う。

「龍は曲がった事は嫌いだからな、約束した事はするだろう。だが行くだけ行って、そこで『まぐわい』におよぶか分からない」
「さ、さいですか…」
少し過激な心の発言に、つい砕けた言葉を使ってしまう舞。
龍と漆がこちらを向く。それと同時に舞が一歩後ずさる。
「さぁ始めようぜ」
「勝負!勝負!」
舞は一旦奥の部屋に行き、ラジカセを持ってくる。
「戦舞いに舞曲は不可欠なんだ。あと『力』は使わないでよね」
それに反対する者はいなかった。
ラジカセより、笛や太鼓の音が聞こえ始める。
「舞、参らせ舞わせて頂きます」
舞が礼をする。
心が続く。

「我流居合術使い、心。参る」
龍が拳をぶつけ、言う。
「中国拳法士『龍爪の龍』行くぜ」
最後、いまいち分かってない漆が言った。
「あ、え?『獅子流忍術』の漆、え〜と…」
龍が小さく漆に助言する。
「忍者なら、いざって言いな」
「い、いざ!」
四人の挨拶が終わる。
舞が扇を掲げ、振り下ろした。
「始め!」

試合は長引いた。
夕方から始め、すでに日が変わったはずだというのに、誰も脱落していなかった。
皆が疲労困憊する中、龍だけは元気だった。
「なぁ、そろそろ止めた方がいいんじゃねぇか?お互いの実力は分かっただろ」

舞は心底悔しそうだったが、これ以上やっても損しかしないと思い、龍の言葉を受け入れた。
心は再び「茶を入れてくる」と言って奥の部屋に消える。
漆を見れば、驚く事に清々しそうだった。
声を掛けてみる。
「『69』に行けないのに何で嬉しそうなんだ?」
「皆強いんだもん、凄い楽しかった!」
漆はただの戦闘狂なのか、と龍は思う。
心が煎れた渋目のお茶を飲みながら、舞は言ってきた。
「形だけだけど、舎弟になってもいいよ」
「形だけじゃなくてもいいんだぜ?」
「遠慮する」
心が、空になり始めた皆の湯飲みにお茶を注ぎながら言う。

「どうしてあれほど動いていたのに、龍は疲れないんだ?」
「拳法ってのはクンフーを積むのに、よく夜通しで鍛練するからな」
「クンフー?カンフーじゃないのか」
龍は熱いお茶を一口飲む。
「本当の発音はクンフーだ。意味を拳法の事って勘違いしてるヤツが多いけどよ『鍛練して積み上げた力の事』を言うんだ。どんなにたくさんの技を覚えても、クンフーを積んだただの突きに負けちまう」
心は「良い教えを聞いた」と言って笑う。
「では、そのクンフーを使って『世直し』を手伝ってくれるのだな?」
龍は短く「あぁ」と答え、心と手を重ねる。

「よろしく頼む」
「任しとけ」
心と龍の重ねた手の上に、舞の手が乗る。
舞は龍に言う。
「これからよろしくね、龍」
「おう、黄金の大船に乗ったつもりでいてくれよ、舞」
「それって沈むんじゃ…」
それに対するツッコミも終わらぬ内に、漆も手を乗せてくる。
「楽しくなりそう、よろしく!」
四人は勢いよく手を下に降ろすように、重ねた手を解いた。

これが四人の出会い。
ただ日本を直したいと思う気持ちで走り出した世直し。
簡単な理由でもよい、そういう想いは、馬鹿が付くほど大きくもあるから…。
四人を止められる者は現れるのだろうか。

そんな壁に当たっても、四人は止まらずに進めるのだろうか。
それは分からない、四人だって分からない。
だが、全力は尽くしたいと思っている。
それを実現する事ができるほどの力は、集まったのだ。
この先、苦難や絶望という闇がある。だが、希望という光もある。
四人はそれを掴み、そして日本中に広めるために…。
光を目指して、世直しという道を、今、走り始めた。


そして数日後、四人によって、世直しの初めの一歩が歩み出されるのだった。


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