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私の夏
【青春 恋愛小説】

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ひと夏の恋の行方-2

「ううん、泣いてないよ。酔いを覚ましてるだけやで」

 返した言葉はしっかり涙で湿っていた。

「あんたアホやなあ、意地ばっかり張って。本当はナツくんに惹かれてるくせに」

 優しかった声に少しトゲが立った。

「そんなことない。あんな子大きらいや」

「何言うてんの、しっかり泣いてるやないの」

「だって相手は高校生やで。あたしの言った言葉で傷つく純粋な子やねんで。あたしはそんなん耐えられへん!それにいつかは嫌われるねん」

「あんた何言うてんの?ホントに面倒くさい子やな。それはあんたの思い込みや!それに例え傷ついても2人で乗り越えたらええだけの話やんか」

「思い込みやない!仮にそうやったとしても根本がアカンねん。相手はたばこ吸って粋がってるガキやねんで。ガキの癖にあたしにキスしておっぱいまで触ってんで。あたしの理想はガキやなくて年上で引っ張ってくれる人なんや!」

「何をウダウダ言うてるんや。高校生?たばこ?キスした?おっぱい触った?そんな些細なこと関係ないやんか」

「関係あるよ。あたしみたいなのが恋愛するんやったら、理想を満たさへんかったら絶対に上手くいかへんよ」

「恋愛をする?そもそもそれが間違うてるわ!あたしの短大の友だちのすーちゃん知ってるやんな。あの娘がいつも言うてるで!恋はするもんやない、恋は落ちるもんなんやってね」

「落ちるもの?」

「あたしの見る限りあんたは真っ逆さまやな。今日一日隠そうとして全然隠せてないその子供じみたウダウダさが証拠や」

「えっ?なんで解るん…」

 隠せてなかったの?

「見てて痛々しいねん。あんたみたいなわかりやすい子、子供でもわかるわ!」

「うっ…」

「さあナツネ、正直に白状しいや!あんた落ちたやろ!」

「そんなこと…」

「さあ本心を言え!キスもホントは嬉しかったんやろ」

「本心…」

「吐いて楽になれっつうの」

「楽に…」

 言ったら楽になれるの?

「そう、早く認めてスッキリしいや!」

 あたしはその言葉にすがった。

「落ちた…」

「はい?なんだって?」

「そうや!今もナツくんのことで頭が一杯なんや!なんで引っ叩いたんやろあたし。キスされた時は頭が真っ白になってワケ解らんようになったけど、後で気持ち整理したら全然イヤやなかったて気付いたんや。でももう遅いやんか!もう連絡の取りようが無いやんか!今さらそんなことを気付かされても仕方ないやんか!」

 あたしは自分の心に正直に向き直った途端、感極まってしまった。

「ようやく素直になったな」

「わあーん、どうしようもないやんか!」

「よしよし、そんなナッちゃんが可愛いで」

「わあ〜ん、可愛くない〜」

「泣くな泣くな、探そうと思ったら探せるやん。大阪の高校生って何人居るかしらんけど。それにツアー会社に問い合わせてもええな」

「そんな雲を掴むようなことできるわけないやんか、それにツアー会社だって他の客のことは教えへんよ〜」

「やってみないとわからんよ。案外簡単に見つかるかもしれんで」

「ぐすん、そうかなあ?」

 そう言って愚図るあたしを見ながらミヤちんはニヤリと笑った。



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