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花火
【女性向け 官能小説】

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花火大会の夜-5

「葵、眠い?」

「うん、ちょっと…」

「横になってろよ。オレ、シャワー浴びてくるから」

「ごめんね…」

たぶん、疲れていただろうし眠れてもいなかったのだろう。
オレの言葉に素直にベッドの上に横たわる。
風呂から出て戻ってきた時には小さな体をさらに小さく丸めるようにして、無邪気な寝息を立てていた。

「ったく。風邪ひくぞ」

タオルケットをかけてやったら目を覚ましてしまった。

「ごめん」

「いや、こっちこそ起こしてごめん」

もぞもぞと壁側にカラダを動かし、オレのためにスペースを空けてくれる。

「いいよ、ベッドの上でゆっくり寝ろ」

「だって、陽平は?」

「オレはこの辺にテキトーに寝るから」

「え、そんなの悪いよ。一緒に寝よ?」

…あのなぁ、もう子供じゃないんだから。
 葵はオレのことそういう対象で見てないかもしれないけど、オレは違うんだぞ?
 って説教したところできょとんとされるだけだろう。

「狭いからいいって」

「やだ、陽平と一緒がいい。陽平が隣にいてくれたら、ちゃんと眠れそうな気がする」

オレのシャツの裾を掴み、横たわったままオレを見上げる葵の顔を見たら、イヤとは言えず、葵が空けてくれたスペースに横たわった。

「狭いぞ。葵寝相悪いんだから蹴るなよ」

「陽平のほうが寝相悪かったじゃん。いっつも朝起きると全然違うところにいてさ。でも今日は朝まで隣にいてね」

「わかったから安心して寝ろ」

「うん、おやすみ」

そういうと眠たそうな顔しながらオレの唇を奪うと満足そうに笑い、オレの胸に額をひっつけるようにして葵は眠りについた。
オレはそっと葵の背中に腕を回し、目を閉じる。

…が、眠りにつけるわけなどなく。

腕の中にいる葵の小ささも柔らかさも。
自分の正直な気持ちに気づいてからは、彼女なんていなくて。
生身の女性の暖かさにいつまで自分が冷静でいられるのか自信がなかった。
まだ葵が妊娠初期かもしれない、という可能性がある以上、襲いかかったりするわけにもいかないのだが。
杞憂に過ぎないかもしれないが、もし本当に妊娠していたら、と考える。
オレが父親になる、とは言い切ったものの、不安がないわけじゃない。
まだ学生だし、生活のこともあるし、マリコさんの気持ちも考えなきゃならない。
葵の心と身体のケアの問題も出てくるだろう。

ふぅ、とひとつため息を吐く。
それは不幸なため息ではなくて。
自分に気合を入れるためのため息というか。
ふと、携帯の着信ランプが光っているのに気づいて確認するとマリコさんからだった。

『陽ちゃん迷惑かけてごめんね。葵、いい年にもなって彼氏もいないみたいだから、陽ちゃんさえよければヤっちゃって』

思わずふいた。
なんていう母親だ。
恐るべし、マリコさん。
葵が見たらまた怒るだろうな。
あえて返信もせず、黙って削除した。
この調子ならマリコさんは問題なし、だろうか。

…とりあえず、明日だ。
 そのためにはオレも少し寝とかなきゃな。

葵のオデコにひとつキスをして、目を閉じる。
こうして波乱にみちた花火大会の夜は静かにふけていった。


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