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『桃色の旅』〜変態映画館〜
【OL/お姉さん 官能小説】

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『桃色の旅』〜変態映画館〜-12

 あらゆる刺激で、本当に気を失いそうになる。荒い呼吸のまま考える。わたしはこんなことを望んでいたんだ……こんなに、いやらしくて許されないことを。

 いままで仕事に没頭して考えないようにしてきた。体の奥に眠っていた欲求も抑え込んで、ただ毎日、仕事を頑張ることでごまかしてきた。でもそんなのおかしい、間違っている。だって、いまわたしはこんなに気持ちがいいんだもの。恋だってセックスだって、もっと楽しんでよかったんだ……

 映像の中にこれまで憧れてきた男性たちが次々と映し出される。わたしは彼らの間を踊るように渡り歩き、生まれたままの姿で彼らと抱きあっている。あられもないポーズをとり、欲望をむき出しにして快楽を貪っている。

 縛り付けられていた鎖から解き放たれたような気持ちになった。映像の中のわたしが恥ずかしいことをすればするほど、どんどん心が軽くなっていった。体に与えられる快感が強まるのと引き換えに、「いやらしい」「馬鹿だ」「ダメだ」と自分を否定してきた気持ちが消えていく。

 映像はやがてぼんやりとかすみ始め、最初に流れてきたのと同じ音楽が鳴りだした。それにあわせて機械で合成したような声が響く。

「いかがでしたでしょうか。あなただけの、あなたのための映画。それがこの『桃色の旅』です。これからの毎日が、あなたにとっていままでよりもずっと素敵なものでありますように……お帰りの際はお忘れ物などございませんようにお気を付けくださいませ。またのご来館をお待ち申し上げております」

 音楽が止み、室内に光が差し込む。背後の扉が開いて、スーツ姿の女性が預けていた手荷物を渡してくれた。

「本日の上映はこれで終了となります。お出口までご案内いたします。お足もとにお気を付けくださいませ」

 座席から立ち上がると、それまで感じていたはずの恥ずかしい感覚は嘘のように消えていた。ホッとしたような、少しものたりないような気持ちを抱えたまま、わたしは映画館を後にした。


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