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花火
【女性向け 官能小説】

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線香花火-3

「へ?はい?えぇぇぇぇっ????」

私のあまりの驚きっぷりにクマが困った顔をしている。

「あ、あのさぁ。だってアタシ、キミより10コも歳食ってんだよ?おまけにバツイチだよ?知ってるでしょ??」

「知ってます」

冷静にビールを飲みながら、そう答えた。
私は唸ってしまう。

「クマにはもっといいコが見つかると思うよ?若くてピチピチのさぁ」

「年齢もバツイチも、人を好きになるのに関係なくないですか?」

「いや、そうだけどさ。でも…」

確かにクマが言っていることはある意味正論だ。
でも。でもだよ。
クマのことは嫌いじゃない。
むしろクマといる時間は心地いい。
かといって今までクマのことをそういう対象として見たことがない。
それに、クマは私にはもったいないと思う。
将来だってあるんだし。

「柚季さん、賭けにのったじゃないですか」

ソレを言われると痛いな。
でもまさかこんな条件だされるなんて思ってもみなかったし…

「オレのことどうしてもそういう対象に見れないって言うんだったら…」

今までに聞いたことのない、クマの低い声に顔をあげる。

「1回ヤらせて下さい。で、オレのこと嫌いになってください」

「え?なんで嫌いにならなきゃいけないの?」

思わず聞き返してしまった。

「柚季さん、そこツッこむところ違うと思いますけど」

私の質問に、クマがいつものように苦笑したと思ったら頭の周りにクエスチョンマークがふよふよ飛んでる私の視界がいきなり奪われた。
がっ、と近づいてきたクマの腕の中にいたのだ。
私の顔を厚い胸板に押し付けるように、クマの手が私の頭を押さえている。

「柚季さん、聞いてました?オレの話」

「うん。カノジョになって、でしょ?でイヤだったら1回ヤらせて、でしょ?で、嫌いになって、でしょ?」

「フツー、カノジョになって、とか1回ヤらせてにツッこみません?あと、この状況とか。わかってます?オレに抱きしめられてるって」

「うん…でもイヤじゃないよ?むしろクマを嫌いになるほうがイヤかも」

「じゃぁオレのカノジョになりますか?」

「…見た目はたいして変わらないかもしれないけど、オバサンだよ?っていうか中身半分オッサン入ってるよ?」

「知ってますって。若いチャンネー大好きですもんね。でもオレは中身がオッサンだろうが、10コ年上だろうが、バツイチだろうが、そんなの関係なく、柚季さんが好きなんです」

まるで子供に言い聞かせるように私の頭を優しく撫でながらクマが言う。

「…ありがと」

「…どういたしまして」

顔を上げると、クマと目があった。

「あのさ」

「何ですか?」

「後悔しても知らないよ?」

「むしろ、オレが柚季さんを後悔させないように頑張ります」

「私のほうが頑張るもん」

「いや、オレです」

お互いの負けず嫌いっぷりに思わず顔を見合わせて吹き出してしまった。

「…よろしくね」

「…こちらこそ…っていいんですか?」

「へ?今それ訊く?」

「訊きますよ。柚季さんだったら『冗談だよね?』とか言い出しかねないし」

「え?冗談でしょ?」

「ほら」

「いや、今のは空気読んで言っただけでしょ?もうしょうがないなぁ。 クマ、目つぶって」

「何でですか?」

「いいからつぶりなさいよ、ほら」

そういえば、抱きしめられたままだ。
うん。やっぱりでっかいクマのぬいぐるみに抱きしめられてるみたいで心地いい。
手を伸ばして、クマのほっぺをつねる。

「痛いっすよ」

そう口を尖らせながらも目をつぶったクマの唇を奪う。

「アタシの勝ち」

驚いて目を開けたクマから唇を離すと勝ち誇ってみる。
あぁ、子供みたいだ。

「オレだって負けませんよ?」

そう言ったクマに今度は私が唇を奪われる。
私がしたようなお子ちゃまなキスじゃなくて、オトナのソレ。

…あぁ、このコ、意外にキス上手いんだ

そんなこと考える余裕すらだんだんなくなっていく。
永遠に続くんじゃないかなんて思ってしまうほどのキスに
だんだん頭がぼおっとしてくる。

「酸欠になりそ」

唇が離れた時、思わずそうつぶやくとクマが照れたように笑った。
抱かれていた手が解かれると、寂しいとさえ感じてしまった。
お互いに残っていたビールに口をつけて、一呼吸。

「柚季さん、オレそろそろ帰ります」

「へ?」

クマの申し出にまた間抜けな声を出してしまう。

「いや、明日も仕事ですし…」

「あ、そうだよね。ごめんね、遅くまで…」

もう少しここにいて、とは言い出しづらくて理解のあるフリをしてしまう。
やっぱり私よりずっとクマのほうがオトナなんだろう。
立ち上がりかけたクマの動きが一瞬止まる。

「うぬぼれてもいいですか?」

「へ?」

「いや、柚季さんの目が『もう帰っちゃうの?』って言ってるようにみえたんです」

そうか、私はそんな目をしてたんだ。
理解のあるオンナのフリなんて、クマには通用しないのか。
っていうか、私そんなに感情が表に出てるの?

「そのうぬぼれ、許す。正解」

「すげぇ嬉しいんですけど、オレ自信なくて…」

「自信?」

ちょっとクマのほっぺが赤い気がする。
頬、っていうよりほっぺ、のほうが似合う気がするまだすべすべなほっぺ。

「いや…あの…最低かもしれないですけど…」

「何よ?」

「怒らないですか?」

「うん、たぶん」

「多分ってそんな。や…このままだと柚季さんのこと、本当に押し倒しちゃいそうで…」

「いいよ?クマになら押し倒されても」


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