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お隣さん
【若奥さん 官能小説】

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紀子の場合2-1

 最近は本当に便利な時代になった。
 インターネットさえあれば本屋に行かなくても本が読め、スーパーに行かなくても食材が手に入る。そして――。

 ガムテープで頑丈に閉じられた段ボールは、明らかに商品よりも大きかった。ガムテープをはがし、中を開く。中は商品が見えないようにエアークッションに包まれ周りには細かい発泡スチロールが敷き詰められていた。

 「まさかこんなものまで買えちゃうなんてね」

 エアークッションに包まれていた商品には『優しく使って☆ピンクちゃん』と書いてある。
 こういうものを買ったのは初めてだ。興味がなかったといえばウソになるが、なかなか買う勇気がなかった。そもそも大人のおもちゃは男性が買って女性に使うものだと思っていた。だけど、色々なサイトで大人のおもちゃを検索しているうちに、購入者の大半は女性だと知った。中には購入者のコメントが付いているサイトもあって、色んなサイトを見ているうちに私も使ってみたくなった。

 色々なおもちゃの写真を見る。それこそ太い物から異形のものまでさまざま。カラフルな色のおもちゃ達。だけど初心者が使うには抵抗があった。
 
 可愛い形のローターですら、買うのにためらう。だけど見ているだけでは満足できない。その時は別に今じゃなくてもいいとページを閉じてしまうが、夜になると買わなかった事を後悔する。

 昨日もいつものようにネットで検索していると、女性専門の悩みサイトを見つけた。そこには性の悩みから女性特有の病気まで幅広い悩みを投稿できるサイトだった。色々見ていると「1人行為」という項目があった。クリックすると1人でするためのアドバイスやおもちゃを使った感想が赤裸々にコメントされている。

 色々読んでいくと、どの人も「このサイトのローターが良かった」とコメントしていた。さっそくそのサイトにとんで、ローターを見ると値段が手ごろで送料が無料。あれだけ買うのを迷っていたのに、手ごろな値段と皆のコメントに心を動かされて、購入ボタンをクリック。ガイダンスに従ってローターを買ってしまった。

 さっそく届いたばかりの商品を開ける。箱の中には商品以外に新商品の広告と納品書が入っていた。
 
 広告には「優しく使って☆プルプルchan」がでかでかと掲載されている。
 それは可愛いピンク色をしているけど、明らかにローターよりも太く男の形をしたものだった。
 シリコン素材で優しく動くから初めての方でも安心という宣伝に「慣れてきたら太いのも買ってみようかな」と思ってしまう私がいた。

 プルプルchanを見た後だからかもしれない。
 プラスチックの透明な箱に入ったローターは思っていたよりも小さかった。
 
 (本当にこんな小さいもので気持ち良くなれるの?)
 
 使ってみたいけどそれは今夜までのお楽しみ。
 
 私はローターを寝室のサイドテーブルの引き出しにしまった。広告は分からないようにびりびりに破いて出来るだけゴミ箱の奥へ押し込んだ。エアークッションと発泡スチロールは袋にまとめてプラスチックごみ袋の中へ。最後に段ボールをつぶして、他の段ボールと一緒にまとめておしまい。
 
 購入ボタンを押したときはドキドキしたけど、終わってしまうと案外普通。

 いつものように洗濯と掃除をして、昨日の余り物を食べて、夕方になったら買い物して夕御飯の食材を買う。
 なんてことはないいつもの生活。

 そして今日も夕飯を作り終える時間に夫から電話がかかってくる。

 「そう。分かったわ。大丈夫よ。じゃあ、お仕事がんばってね」

 夫は今日も残業。
 帰りはなるたけ早く帰るけど先に寝ていてかまわないと淡々と言われてしまった。

 この生活に不自由はない。不自由はないけど不満だらけ。
 刺激のない安定した暮らしを求めた。夫はそれに応えてくれている。こんな広く立地条件の良い高級マンションに住まわせてくれて、家事さえしてくれれば後は何をしても良いと言ってくれる。

 だけど私が求めていた生活はこんな生活だっただろうか?
 安定した刺激のない生活というのはこういう生活の事を言うのだろうか?

 最近、夫に愛されている実感さえわかない。
 もしかしたら私たちは夫婦として終わっているのかもしれない。いや、最初から夫婦じゃなかった。家にいても話さない、一緒にいても何もない。こんな仮面夫婦をあと何年演じなければならないのだろうか。

 きっとこれから先も私が満たされることはない。
 だから夫の代わりが必要だった。


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