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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-21

一方、闇の中から別の物体の輪郭が浮かび上がってきた。

それは明らかに人間しかも形や分厚さから
“男の唇”だと分かる。



その唇が半開きの状態で、まるで闇の中を泳いでいくかのようにスゥーッと華の方に向かっていく。


やがて唇が華の側までくると、
華は待ち構えていたかのようにその花弁が外に向かって大きく広がり、その中心を唇の前に晒し出す。





唇はそのまま広がった華の中心に向かって吸い付いた。



―――チュル・・・ヂュルル、ヂュルル・・・・



“ァアアアアア―――ッッ・・・・・”



唇が蜜を勢いよく舐めとり吸い上げる音と、

それに合わせて女の感極まった矯声が闇の中に響いていく。


その声が高くなり低くなる都度、
花弁の一枚一枚が小さく震動したり縮んだりと様々な反応を示す。




ひとしきり蜜を吸い上げ、唇の舌先で華の花弁の外観を一枚ずつなぞっていた唇が、ゆっくり華から離れ
闇の中に溶け込むようにして見えなくなった。



それと相前後して、
闇の中から別の物体がまるで生えてきたかのように姿を現した。


その物体は細長く、
先端付近がややかさ張っている。

物体の側面は赤黒く細い筋か幾重にも、まるで蔓のように絡み付いている。









その細長い物体が先程の唇同様、闇の中を滑るようして華に近づく。



物体の先端がピタリと華の中心に添えられると、

それだけで華を形成する花弁全てが波打つようにヒクヒクとざわめいた。

まるで物体の到来を待ち望んでいたかのように。








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