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氷炎の舞踏曲
【ファンタジー 官能小説】

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変貌と絶望についての記述-2

 酒を飲んだ兵士達は何とか立っているものの、壁に寄りかかって半分以上眠っている。
 苦もなく兵士達を避け、そろそろとサーフィは自室へ向かう。

 祝いの席に武装は出来なかったので、刀は部屋に置いてあるのだ。
『君の母上の品だそうですよ。』
 昔、そう言ってヘルマンから渡された、大事な刀だ。
 同時にあれは、サーフィの牙で、唯一の希望だった。

 外の世界で、どうすれば生きれるか、必死で考え抜いた。
 そして、剣士としての腕を買って貰うしか、思いつく手立てはなかった。
 城を出たらすぐ、正体がわからないように、賞金の金貨で目立たない服を買うか、通りすがりの人にドレスと服を交換してもらおう。
 そして出来るだけ遠くまで逃げて、それから雇い主を探そう。
 それでも、恐怖に足はすくみそうになる。
 間違いなく追っ手はかかるだろうし、外の世界で受け入れられる保証はどこにもない。
 血を確保するのも、これからはどうにかして自分でやらなければならない。
 気が遠くなりそうな数々の難関が、何度も足を止めそうになる。

“選べ。”

 自由への誘惑と、死の恐怖からの足枷が、正反対の方向にサーフィを引っ張りながら、選択を迫る。
 このまま安泰な檻で過ごすか、明日の命もしれない自由を選ぶか。
 大理石の廊下を走り抜け、やっとたどり着いた自室の扉の前で、立ち尽くす。
 一瞬、このまま何もなかったようにホールに引き返してしまおうかと思った。
 だが、萎えてしまいそうな気力にムチを振るい、歯を喰いしばって、サーフィは扉を睨みつける。
 この檻にいる理由なんか、もう何もない!

 この十八年間、ずっと逃げ出したい誘惑には駆られていた。
 しかし、死の恐怖以上に、いつもぎりぎりの所でサーフィを足止めしていたのは、ヘルマンの存在だった。
 彼がいるからこそ、この城で飼われている価値があった。
 いつだって、とても優しくしてもらえたし、書斎に入れてもらえるのは、未だに自分だけだったから……ほんの少し、期待して、自惚れていた。
 あの時の、ヘルマンの怒ったような顔が、忘れられない。
 あの方に見放されたなら、もうここでの生活に耐える理由など、何も無い。
 一瞬の自由の対価に、死んだってかまうものか。
 ここにいる限り、生きながら死んでいるも同然だ。
 生ける屍……吸血姫よりも、虚ろでおぞましいバケモノだ!


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