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氷炎の舞踏曲
【ファンタジー 官能小説】

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東の女性についての記述-2

「息さえあれば、死にかけてても、ホムンクルスは作れますけどね。」
 ヘルマンはため息混じりにつげる。ホムンクルスの説明を、こいつはちゃんと覚えていないのだろうか?あの幹部は、一通りの説明をしたと聞いているが…。
「なら、問題ないだろう。お前を雇ってすぐ、いつでもホムンクルスを造れるよう、準備をしておけと命じたはずだ。」
「それは出来てますけどねぇ……東の民からホムンクルスを造ると、人の生き血を毎日飲まなくては、すぐ死んでしまう『未完成品』になってしまうと、聞いておりません?」
 古代の錬金術師達が行った、血も凍るような実験記録に記されていた事だった。
 東の島民だけでなく、エルフやドワーフなどの異種族でも、同様の結果が出たという。同じ人間とはいえ、大陸の人間と東の民は、種としてほんの少し違うのかもしれない。
「聞いたとも。」
 憎くてたまらないものを見るように、狂気じみた顔でカダムは東の女性を見下ろす。
「吸血鬼……バケモノになるからこそ、造らせる価値があるのだ。」
「あのですね、厳密には吸血鬼と違いますよ。バケモノというのも不適切ですね。そもそも吸血鬼の定義は……」
「余計なごたくはどうでも良い!」
 バン!と壁を殴りつけ、カダムが唸る。
「肝心なのは、こいつに致命的な弱点ができる事だ。」
「はぁ?」
「血を飲まなくては死ぬ、という事は、血を提供してやる相手に従わざるを得ないという事だろう?俺が、その為の使用人を用意してやる。」
「お金の為に身体を売る人間はいくらでもいますから、血を売る人間もいるでしょうがね。しかし、教会も黙れせなくてはなりませんし、随分と高くつきますよ。」
「フン、今日から俺は、シシリーナの王だ。それくらい簡単にできる。」
「まぁ、そうでしょぅね。」
 それは事実だったから、素直に肯定した。
「今では平凡な主婦を装ってるが、こいつは東の国では、無敗の女将軍だった。その素質を引き継ぐホムンクルスなら、護衛にはうってつけだろう。」
「ああ。東の島は、女性がたくましい国でしたね。」
 ヘルマンはかの国に赴いた事はなかった。
 東の島は、フロッケンベルクの魔術や錬金術を嫌い、その道に携わる者は、入国すらできないのだ。
 それでも情報くらいは入ってくる。
 東の国は完全な女性社会で、統治者も女王なら、戦士の九割も女性らしい。
 その中でも特に、勇猛果敢な強さと不屈の精神力を認められた者だけが、将軍になれる。
 家柄や血筋は一切関係ない。個人の能力だけを、純粋に重視するらしい。
意識のないまま血泡を吹いている女性を見下ろし、ヘルマンは先ほどから抱いていた小さな疑問に納得する。
彼女の地味で平凡な主婦の服装から覗く手足は、まぎれもなく、ごく幼少期から鍛えられた戦士のそれだった。
「徹底的に命綱を押さえでもしなければ、この女は飼いならせん。美しいが、まるで猛獣だ。今も子どもを人質にとってようやく捕らえたが、兵を一団殺された。」
「……。」
 先ほど以上に品のない告白に、今度はコメントをする気にも、なれなかった。


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