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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-4



夕方6時。
鼓笛隊の練習が終わり、簡単なミーティングを今終わらせた瑞稀は練習場を出た。
明日は日曜日で、鼓笛隊の練習が入ってるのでトランペットっは練習場の倉庫に一時的に置かせてもらった。
練習場からしばらく歩いた所で、少し離れた場所にある駐輪場に自転車を停めていた優羽と合流する。そこからまた少し歩き、瑞稀はバスに乗り込み駅に向かう。
駅に着いたら、電車で終点まで。
その電車を降りたあとは駅から30分かけて歩くか15分で済むバスに乗るかだ。
まあ、何が言いたいかと言うと、瑞稀の家から練習場までは約一時間の距離がある。
その間はずっと一人なので、眠ってしまって、降り損ねる・・ということを最近しょっちゅうしていた。
(最近じゃなくても、頻度はあるのだが)

理由は、簡単といえば簡単。
一か月前の、あの出来事。
自分が閉じ込められて、家族や親友である秋乃、拓斗に心配をかけた上に、
嫉妬した菜美が襲いかかった時に、拓斗が自分をかばって左手に怪我を負ってしまったこと。秋乃を、もう少しで加害者にしてしまうところだったこと。
その秋乃も、恐怖で気を張ってしまっていたこと。それが解けたとき、今まで見たことがない子供のように泣いてしまった事。

瑞稀はバス停に着くと優羽と手を振って分かれる。

「(・・私は、大切な人の心と身体・・両方、)」


『傷つけた』


今の瑞稀には、二人に対する申し訳なさがココロのほとんどを占めていた。

あのあと、瑞稀は手を洗わなければならなかったし、拓斗の傷が気になったので拓斗と共に保健室に行った。
秋乃も着いて行きたかったようだが、中岡先生に、事情が知りたいと頼まれたので涙目だった千晴とともに職員室へ。
菜美も職員室に連れていかれ、保護者に迎えに来てもらうことと、しばらく謹慎することになった。

一階にある保健室に行くため、階段を降りている瑞稀と拓斗は沈黙した状態だった。
いや、拓斗は話そうとしたのだが、瑞稀のまとっている重い空気に口を閉ざすしかなかった。
ただ、それでも、瑞稀の抱え込んだ不安を取り除こうと、保健室から帰って職員室に入る直前で

「お前のせいじゃないから、気にすんな」

とは言ったが、瑞稀は暗い自分の世界に入っていたために聞いていなかった。
それから、瑞稀と拓斗の間には気まずい空気が出入りするようになった。
最初の方は秋乃とも気まずかったが、秋乃が

「うざったい。こういう空気、嫌いだって言ったっしょ?」

と、叱咤してくれたので、なんとか秋乃とは元のように話せるまで回復した。
しかし、拓斗にそんな勇気はなく・・。
結果として、特に進展もしないまま、夏休みに入ってしまった。
拓斗は、瑞稀にまた甘えて欲しかった。
やっと見せてくれたココロの奥が、また閉じられてしまったことに焦りがあった。
だが、その焦りから出る言葉は瑞稀を傷つけてしまうんじゃないかと怖かった。
それで、一生避けられるようなことなんて御免だ。
結局、一線を超える事を怖がって踏みとどまった拓斗が、瑞稀に声をかけられる訳がなかった。

勿論、瑞稀はそんな事知りもしない。



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