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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第30話 一枚のワンピース-2

「こちらの商品はお客様に限り、無料にて提供しております・・・・・。」

「駄目よ、政俊さん!・・・・・。」

政俊は、始めから睦美にプレゼントしようとしていた。
あえて、その事を打ち明けてないのは、変に気遣いされて、安い商品を選ばせない為だった。
そのきめ細かい心配りが睦美の心を捉え、政俊に対する気持ちが、揺るぎも無い物になった瞬間でもあった。

「さらに・・・こちらの商品をご購入いただいたお客様に限り・・・もれなく、こちらの映画のチケットが二枚、お付きします・・・・・。」

政俊はそう言いながら、背広の内ポケットから、チケットの入った封書を取りだした。

「睦美さん・・・今度の日曜日空いてますか?・・・・・・。良かったら・・・そのワンピースを着て、一緒に映画でも行きませんか?・・・・・。」

政俊は、他の店員に気付かれないようにと、素に戻りながら小声で尋ねた。
もちろん睦美は、満面の笑みを浮かべて、黙って頷いた。
その映画の誘いが、お互いにとって初めてのデートになるのだった。

・・・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・

そのデートでの帰り道、ホテルのベッドで、二人は肌を交わしていた。
誘ったのは、睦美の方だった。
その前に観た映画は恋愛物で、その余韻に引きずられるかのように、二人は帰路を歩きながら手を繋いだ。
特に用も無いのだが、睦美は、繁華街を通る先の古本屋に立ち寄ろうと、政俊に促した。
その繁華街に立ち並ぶ、ホテルの前を歩いてる時だった。
初めてのデートでいきなりと戸惑う政俊に対して、睦美は肩に寄り添うように合図を送った。
この頃から、物事が決まると行動が早い、睦美の性格が表れていた。
もう、睦美に取って政俊は、かけがえのない存在で、早く繋がりを感じて安心感を得たかったのだ。
睦美は、政俊の前にも数人の異性と肌を交わしてきたが、全てが、お互いが惹かれあっての事だった。
身体だけの関係で居られる加奈子と違い、繋がりに惹かれる想いが無ければ、受け入れる事は無かった。
そしてこの時、政俊を受け入れて、睦美の中で何度も往復していた。
その度に睦美は悦び、政俊の胸元で満足気な表情で乱れるのだった。

「あっ・・あっ・・・政俊さん・・・・・。」

睦美は、押し寄せる快楽の中で、政俊と繋がる喜びを感じていた。
数日前に、きめ細かい心配りと洋服選びの対応に同じ価値観を見出していたが、それはベッドの上でも同じだった。
政俊は、睦美の悦ぶ方へと滑り込ませて満足させていた。
その政俊の全ての心遣いが、これからの睦美の心も身体も満たしてくれると思い、一生を共にする事を決意した。
この時、睦美は26歳で、政俊は31歳を迎えたばかりだった。
二人は、お互いの愛に揺るぎ無い物を感じながら、頂点を迎えようとしていた。

「あっ・・あっ・・あっ・・政俊さん!・・・政俊さん!・・・・・。」

「睦美さん!・・・睦美さん!・・・睦美さん!・・・。」

・・・・・睦美さん!・・・・・

『睦美さん!・・・しっかりして下さい!睦美さん!・・・・・。』

そして今、睦美は慶の胸元で抱きかかえられていた。

「あっ・・・慶・・・・・。」

慶の応答に、睦美は意識を取り戻した。
それは、数分の間だが、その短い中で睦美は、額に汗を滲ませてデッサンをする慶の姿を、必死で自分に尽くす若い頃の政俊の姿と重ねてしまったのだ。
しかし、そこには一生を共に誓った若い頃の政俊は居らず、永遠に共に歩む事の出来ない、愛していた慶が居た・・・・・。


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