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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第14話 デッサン-2

「睦美さん・・・後、もう少しですから我慢して下さいね・・・・・。」

睦美は、少し気が緩んでいた為、この言葉で再び気を引き締めポーズをとった。
そして慶は、鉛筆を寝かせ、影の濃淡を表現していた。
それは、同じく絵画を嗜んでる睦美にも分かった。
それと同時に、終わりが近づいてる事も・・・・・。
しばらくすると、慶は手を止め、スケッチブックを遠まわしに見ていた。

「睦美さんお疲れ様です・・・・・・。もう良いですよ・・・出来上がりましたから・・・・・・。」

その時、室内には張り詰めた緊張感が走った。
そう、デッサンと言う口実で再び会う公約が、切れた瞬間だった。
これからは、お互いの私欲の為に、手探りで伺うしかなかった。

「ありがとう・・・慶君もお疲れ・・・・・。どう?・・・上手く描けた?・・・私にも見せてくれる?・・・・・。」

睦美は、襟元を正して立ち上がると、慶の座るベッドに向かった。
その表情は、平素を装ってはいるが、先の事を考えると心中穏やかでは無かった。
期待と不安が入り混じるように、睦美の心を乱していた。
そして、息を飲むように慶に近寄ると、さりげなく隣に座った。
そう・・・右利きの慶に対して左側に・・・・・。

「うあ・・・凄いわ!・・・上手く描けてるじゃない!・・・・・。本当に・・・本当に素敵よ・・・・・。」

睦美の言葉は、演技でも無く本音だった。
本来の目的を忘れさせるくらい、慶の描いた絵は見事だった。
正確に描かれた人物に、影の色彩を表現したデッサン力は、誰の視点から見ても称賛される物だった。

「ねえ・・・ちょっと貸してくれる?・・・もっと近くで見たいの・・・・・。」

睦美は、慶からスケッチブックを取り上げると夢中で見入っていた。
それを横目で見た慶は、自分が丹精を込めて描いた絵に対して、睦美が喜んでる事に胸を撫で下ろした。
そして、心落ち着いた時だった。慶は我に返り、今の状況を改めて確認した。
それは、隣に睦美が座り、今にも身体が密着しそうなくらいの距離だった。
二人だけの男女の密室で、お互いが一つのベッドに座る状況が只ならぬ事なのは、男女間に無知な慶にも分かっていた。

「本当・・・まるで写真みたい・・・・・。よく、こんな短い時間で描けるわね・・・・・。こんなに才能あるなら、画家目指せば良いのに・・・もったいないわ・・・・・。」

睦美は、すっかり目的心意など忘れ、絵の虜になっていた。
それを尻目に慶は、改めて睦美の姿を眺めていた。
今にも吸いこまれそうな口元には、艶のあるコーラルピンクのルージュが塗られ、そこから伝う首筋から胸元までには、うっすらと汗が悩ましく浮き、さらに足元に目を向ければ、薄い黒のダイヤ柄パンティーストッキングの繊維まで分かるほど、悩ましく目に写っていた。
極めつけは、ほんのりと香るフローラルな香水の匂いが包み込むように広がり、その匂いの元へと誘われそうな雰囲気だった。
慶は、睦美を目の前にして、理性と本能の狭間で葛藤していた。

『お互いが、デッサンと称して居る二人だけの密室・・・・・それが、偽りのデッサンなら、その先には真意の目的があるはず・・・・・ただ・・・もしそうでなければ・・・・・。』

それが、慶を悩ませていた。
綺麗に終わるなら、このまま静観しても構わないが、本能的に睦美を求めるなら、行動に移すしかなかった。
その答えは、慶のみなぎる物にあった。
今、慶は無性に睦美が欲しくてたまらなかった。
純粋に恋焦がれれる気持ちはあっても、身体を求める愛欲の方が勝っていた。
ただ、睦美の真意は、まだ見えてこない。
それで怖気付く気持ちもあるのだが、慶の本能は抑えきれなくなっていた。
その時だった・・・・・。

・・・・・シュッ・・・・・シュッ・・・・・

モーテル通りで耳にした、ナイロンの摩擦音が室内に響き渡った。
そう、睦美が脚を組んだのだ。
それは、慶を誘う分けでも無く、無意識の内にだった。
それを目の当たりにした慶は、ついに動いた・・・・・。

「睦美さん・・・・・。」

慶は、言葉と同時に、スケッチブックを持つ睦美の右手の甲に、自分の左手の平を添えた・・・・・。


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