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『STEEL DUST GLAVES』
【アクション その他小説】

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『STEEL DUST GLAVES』人形舞刀篇-2

悪鬼羅刹の如くして、玲はその場にいた数名を一瞬のうちに絶命させた。
足の甲の肉が抉れている。
そうか、神経の集中している部分を突き、気付けをおこなったのか。
白は得心する、ああ殺されるなと。
「どうしてこんなことを」
落ち着いた玲の冷たい声、貌は能面の如く。
「お前のそんな顔が見たかったから」
笑った。
「そうか」
そう言って玲は白の首を刎ねた。
白の記憶は其処で一時、切断される。
幸いにも白は同門の拳法家達のお陰で脳死段階に至らず、親類縁族の計らいでサイバネ手術を行い、今に至る。
娘を失った師父は何処かに消え、玲も行方を眩ましていた。
陸の統制を失った武侠達は再び数多の派閥を組み、最強の名を争った。そして、最後に生き残ったのが白の所属する”三合会”であった。
その骨子は陸の筆頭とも呼べる弟子、”金剛夜叉”劉周蓮”妙掌刹那”楊明孔”制闘覇刀”李黄文。
一騎当千の彼等が居る“三合会”の勝利は当然の結果であった。
”金剛夜叉”劉周蓮は武門だけには飽き足らず香港シンジケートから四方に渡るアジア圏の裏社会を支配した。
そして、白は周蓮から才覚を見出され人身売買、売春斡旋、麻薬取引などの裏商売を任せられることとなる。
“繰躯傀儡”の字名は伊達ではなく、彼に”忠実”な部下達が取引を見事に仕切り、会は莫大な利益を生んだ。
今彼の居る”桃源郷”もまた彼の所有する売春宿だが、此処は少し趣きが違う。
此処を知る人間が居れば、あの人形屋敷のことかと嬉々として饒舌に話してくれるだろう。
人形嗜好者向けの、愛玩用機械人形の売春宿。そこが”桃源郷”だ。すべてが偽りの楽園。
そして此処の人形達には売春の他にもう一つ役割があることは余り知られていない。


台湾で玲が見つかった。
その知らせを聞いた時、白は震えた。
絶え難い歓喜に。
然も、陸師父を殺して指名手配となっていると聞く。
三合会を狙っているらしい。
私の為にか。
私に逢いたいのか。
私を殺したいのか、玲!
まるで相思相愛だと判った乙女の様に、白の胸は高鳴った。
白は玲を憎み、それ以上に愛している。
もし黄がしくじれば。
そう思う。
白には、万に一つの確立の勝機しかない。
そして、その万に一つ勝てる場所が此処だ。
白は待つ。
永遠に自分から逃れられないように脳を弄ってやろうか。
白馬の王子を待つ、恋する乙女の様に、
彼は一途に玲のことを想い続ける。

呉雲計は何時もの様に店先に添え付けられた監視カメラを見ていた。
客が来れば応答審査して通す、それが彼の仕事だ。
「はァ」
溜息も吐きたくなる。
”桃源郷”に来るのは何時も変態を地で行くような化物どもばかりだからだ。
奴等の醜い面を見ていると思わずその面に吐きたくなってくる。給料が高くなければとっくの昔に辞めている。
然し、悲しいかな“桃源郷”の給料は法外に高い。
しかも、今日はオーナーの変態ナルシスト野郎、白麗花が来てやるときた。
溜息も吐きたくなる。
「はァ」
再び溜息。
ふと、モニターに人影を見つける。
白髪に、汚らしい黒い外套。
人形嗜好者にしては、まともな面だ。それとも只の宿を求める乞食だろうか。
乞食ならばインターフォンを使って追い出すのだが、
男の手にしたモノに目がいった。
抜き身の刀だ。
閃いた。
馬鹿、な。
目前の合金製の扉が切り裂かれた、重い音を立てて倒れ落ちる。
警報機が鳴り響く。


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