投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

氷の解けた日
【SF 官能小説】

氷の解けた日の最初へ 氷の解けた日 35 氷の解けた日 37 氷の解けた日の最後へ

現実世界へ-1

 オンラインした私はリアル・ゲームの仮想空間に飛び出した。
私の体はスライムのようになって龍の谷の地面に這いずり回っていた。
苦しい。すると小型翼竜の群れが私に襲いかかってきた。
私は自分の体を回転させて彼らを弾き飛ばした。
だが思うように体が動かないため、また攻撃される。

 そのとき向こうから変な人間が来た。
顔が表と裏に2つある人間だ。
表は男の顔、裏は女の顔だ。
まるでローマ神話のヤーヌスの神のような代物だ。
それが私に向かって来た。
そして合体した。
私はアシュラになっていた。
そうだった。
電子生物のカリアとマチモリにここで待っていてくれるように言ったのだ。
小型翼竜は私の姿を見た途端、もう興味を失って遠くへ飛び去ってしまった。

 私は最高の技術を使って、今まで誰もなし得なかった危険なことをしようとしている。私は自分自身をプログラムした。

それは3分後に爆発する時限爆弾を抱いて寝るような危険な行為だ。
成功する確約はない。
失敗したらオリジナルの私が死ぬだけだ。
だが、もう引き返せない。私はオフラインした。

 激しい痛みが右腕の付け根を襲った。
」まるで引きちぎられるような痛みだ。

 私は気を失うまいと歯を食いしばり、自分の右腕がアシュラの右腕になっているのを確認した。
部屋の灯りが激しい電力消費で点滅している。そして再びオンライン。

 龍の谷に再び現れた私は、龍の谷の空に雲が湧いて雷が鳴っているのを見た。
大量のエネルギーが動いている証拠だ。
私は再びオフライン。

 次は左腕の付け根にマサカリで切断されたような痛みが。
すぐにオンライン。 
雷がアシュラの私に向かって落ちて来た。
オフライン。
痛い!
オンライン。
雷が無数に私に向かって落ちて来る。
オフ。
首が!
オンライン。
周りの地面が崩れて岩の塊が転がって来る。
オフ!
オン!
オフ!
オン!……。




 私はロータスハウスの自分の一室で気を失っていた。
目覚めた私はヘッドリングを外した。
部屋の固定端末は焼け焦げて煙が出ていた。
もうオンラインはできない。
体のあちこちが痛い。
雷に打たれたりして火傷を負ったらしい。
体から肉が焦げる匂いがする。
私の胸には生命点29999ポイントの表示がしてあった。
それは見ているうちに1ポイントずつ減って行く。
1秒に1ポイントずつ。
計算するとあと8時間ちょっとでそれは0ポイントになる。
だから急がなくてはいけない。

 今の私は、仮想空間から現実世界にテレポートして実在化したアシュラになっていた。
 そしてその存在そのものが矛盾に満ちたものであり、ありえないがために現実世界の空間に留まることを拒否されているのだ。
だから私はあと8時間ちょっとで消滅するのだ。

 マチモリとカリアという電子生物を仮想空間から無理矢理連れてきた結果、彼らが私の体の細胞に結びついていることができるのにもタイムリミットがあるということなのだ。

 私はレンコンの穴から飛び降りた。
自分の部屋から出るところを誰かが見ているといけないので、そうしたのだ。

 ドーンという音をたてて高さ12mほど下の地面に着地した私は、歩き出した。
ここは首都だからガルチック・コユナ社の本社施設へは歩いても行ける。
コミニュケーション・タイムではないので、街の通りには誰もいない。
たまにエアタクシーが飛んでいるくらいだ。
 


氷の解けた日の最初へ 氷の解けた日 35 氷の解けた日 37 氷の解けた日の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前