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【SM 官能小説】

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鏡 〜出逢い〜-4

「は…はぁ…はぁ…ね、ねぇ…お願い…少し休ませて…」
ユカが懇願する。
「ああ…」
俺はそう答えると、ユカの中から自身のモノを引き抜いた。
暖かい女の体の中から抜き出され、冷たい空気に晒された俺のモノは、力を失ってゆく。
「もうやめておこうか。」
そう言う俺に
「いいの?」
ユカは少しだけ困惑したように答えた。
「ああ、いいんだ。シャワーを浴びてくるよ。」
ベッドの上でまだ荒い息を続けるユカを残し、俺はバスルームに向かって行った。
熱めのお湯を強く体にあてながら、俺は溜息を吐く。
(…やっぱ駄目だな…)
自分の意志では如何ともしがたいジリジリとした痛みにも似た感覚が体に広がり、俺は虚しさと苛立たしさを同時に覚えるのだった。
晶には言わずにいたが、これまで晶と共に出会った何人かの女の子たちを抱いても俺はイケずにいた。
(また今日のも“まあまあ”だな…)
鏡越しに自分の顔を見ながら、俺はあと何分か後に晶に言うであろう言葉を想い苦笑した。
部屋を出た俺とユカが外に出ると、そこには既に晶とミユキの姿があった。
「ここや」
手を挙げる晶の元に向かい
「待たせたな」
そう答え、ミユキとユカに別れを告げた。
「ぁ…」
ユカが何か言いたそうな素振りを見せたが、俺は気付かないふりをしてその場を離れて行った。
二人の姿が見えないところまで来ると
「なんやねんっ?!あの女!」
晶が吐き捨てるようにそう言った。
「どうしたんだよ?」
「どうしたもこうしたもあるかいっ!おまえはマグロかっ?!っちゅーねんっ!」
「いや、市場に転がっとるマグロの方がまだマシやっちゅーねん!高値もつくしやな…」
「不っ細工な奴ちゃったで…あー、腹立つわぁ〜」
すごい勢いで悪態をついた。
「め、珍しいな…おまえがそんな…」
晶の勢いに圧され、俺は狼狽えた。
「す、すまん…堪忍や…」
我に返ったのか、照れながら晶がそう言った。
「い、いや…おまえがそんなに熱くなるのも珍しいからさ。」
俺はわざとおどけた顔をしてみせた。
実際、晶は自分でも『俺はジェントルマンやしやな、博愛主義者やねん』
と公言してはばからないように、女の子に対して冷たい態度や酷い態度をとることは無く、美人に対してもそうでない娘に対しても分け隔て無く接することで人気を集めていたのだ。
その晶が悪態をつくのだから余程の事があったのだろう。晶は言わないが、俺は晶の中に隠されたプライドの高さに気付いている。何があったのか?などと聞くのが晶の名誉にとってプラスになるものでは無い事くらい俺はちゃんと理解していた。
「ま、当たりもあればハズレもある。ってことで…」
適当に言葉を濁してこの場は取り繕った方が無難だな…俺の理性がそう教えていた。
「おまえの方はどないやったねん?」
苦笑いをしながら晶が聞く。
「まあまあ…ってことで」
今度は俺が苦笑する番だった。
二人でガードレールに腰掛けながらコーラを飲んだ。
「なあ、晶」
「ん?」
「おまえ何のためにナンパしてるんだ?」
「ブッ!!」
口に含みかけたコーラを吹き出し、晶は噎せる。
「ガフッ!…ゲッ、ゲホッ、ゲホッ…」
「いきなりなんやねん?!」
苦しそうに咳込みながら晶が聞き返す。
「あ、ごめん…悪かった」
「何のためにってか?!」
ワハハハと笑い出し
「愛やで!愛!」
そう言った。
「愛?!」
今度は俺が吹き出した。
「愛ってか!ナンパで愛ってか!」
「ギャハハハハハ!」
二人で大きく声をあげ、腹の底から笑った。道行く人が不審そうな顔をして振り返ってゆく。
俺たちは腹が痛くなり、息が出来なくなる程笑った。
その後、俺たちは更にくだらない話をしてまた声をあげて笑った。
俺は、晶と共に過ごすこの時間がたまらなく好きだった。ナンパした女の子たちと過ごすどんな時間よりも、晶と共に過ごす時間を全身で楽しみ解放されてゆく自分が好きだった。

ナンパした女の子たちとベッドを共にした後は、どんなに晶と愉快な時間を過ごしても、俺の体の中に残ったおき火のような欲望の残骸を宥め、無視する事は出来なかった。
家に戻り、自分のベッドに横になると、自らの体から溢れこぼれ出そうとする欲望の残骸を放出してやらなければならないのだった。
モゾモゾと自らのモノを握りしめ、目を閉じて想像の世界に入り込んでゆく。
悔しい事に、俺の欲望を放出させるのはいつも洋子さんだった。紅い縄を体に這わせ、苦痛と快感両方を顔に浮かべた洋子さんを想う時、俺の欲望は頂点を極め虚しさと快楽を同時に与え消えてゆくのだった。


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