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Enfant Terrible―或る女の独白―
【ロリ 官能小説】

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-1

敷地の老桜が一斉に咲き始めた。血の気の引いたような花の薄霞が墨色の節立った幹を覆い尽くす。
さやかは四年生に進級した。
辺りの空気がうっすら黄金色に染まり始めた夕方、彼が祝いの膳を用意している。学校から帰ったさやかは良い匂いの漂う台所を覗きに来た。
『おじさん、すごい。美味しそう。でも二人には多くない…?』
『食べきれなくていいんだ。祝いはテーブルを賑やかに満たさないとな』
ライトグレーのニットの腕をまくった彼の腕は筋肉が浅黒く盛り上がってつややかだ。不思議なものだ。今は特に鍛えていないのに、筋肉は張り詰め、体型の衰えが見えない。
彼は作った料理を大皿に盛り、次々にテーブルに並べていく。
鶏の唐揚げには白ごまと青葱を散らし、アスパラガスとベーコンのクリームグラタンに使ったベシャメルソースは彼の手製だ。そこにグリュエールチーズと、ほんの少しのゴルゴンゾーラチーズでアクセントを付け、ゆるく仕立てたソースに生卵を落とし、たっぷりのパルミジャーノで覆ってオーブンで仕上げてある。人参、きゅうり、生玉ねぎのたっぷり入ったポテトサラダは卵黄とオリーブオイルで自作したマヨネーズに粒マスタードを混ぜて調味し、じゃがいもにはキタアカリを使い、ねっとりした仕上がりにしてある。どれもさやかの好物ばかりだが、少しずつ大人のあしらいを加えてある。
ハーブを腹に仕込んだ鯛の塩釜焼きは祝のしるし、早採りの筍ご飯、筍の穂先と山菜の天ぷらは彼の好みのようだ。
『さやかの気に入るかはわからんが、ま、気持ちだ。白ご飯もあるからな』
そう言いながらシャンパーニュの栓を開けた。ブリュットはテーブルに二つある。
『さやも…飲んでいいの?』
『祝いなんだ。ちょっとくらい構わないだろ。ダメだったらすぐ止めてジュースでもウーロン茶でも飲めばいい』
『うん。おじさん、ほんとに有難うございます。…写メ撮ってもいい?』
さやかはスマートフォンを取り出すといそいそと撮り出した。
『さや、今が一番しあわせ。おじさんと暮らせてとっても』
お代わりのポテトサラダを盛り付ける彼を見上げてさやかは神妙にそう言った。


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