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Enfant Terrible―或る女の独白―
【ロリ 官能小説】

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そこを出て廊下を曲がると大きなガラス戸があった。
『ここが風呂場。隣は洗面所に洗濯機と乾燥機。洗い物はこのランドリーボックスに入れてくれ。お前の洗濯物は当面は俺がやるが、いずれ使い方を覚えなさい。出張で俺がいない時もあるし、俺に触られたくないものもあるだろう』
『…』
彼はそこを出ると、さやかの部屋と自室のある方向に廊下を戻り始めた。
『まだ部屋はあるが、使ってないから案内は不要だろう。興味があるならヒマな時に探索すればいい。ただし、迷わないようにな』振り返ってフッと笑った顔にさやかは思わず見入ってしまう。

彼は子供に合わせた言葉遣いは一切しなかった。
『お前にパソコンを買っておいた。初期設定は済ませてあるから好きに使いなさい。俺の言ってる意味が分からなかったらそれでググれ』
自室に入ると机の上のパソコンを開けた。脇に置かれた取扱説明書を見ながらPOWERとあるところをこわごわ弄ってみる。するとパソコンの電源が入った。
『ググれ…』彼の言葉を反芻する。話の流れからして調べろ、と言うことだと解釈したさやかはインターネットのアイコンをクリックしてみた。親から与えられたスマートフォンで使っていたのと同じ検索サイトを見つけると、まず『ググれ』と入力してみた。
彼はパソコンに子供のアクセス制限を施していなかった。知りたいことは知りたいだけ知れば良い、というのが彼の主義だった。だからさやかは好奇心の赴くままあらゆることを与えられたパソコンで調べるようになった。

一緒に住み始めて一週間が経とうとしていた。
この家に来て二日目から、さやかは彼の作り置いた料理を冷蔵庫から出し、レンジで温めて一人で食べていた。
彼の作る料理にはさやかは毎日目を瞠った。住んでいた田舎で一番高級なレストランでも味わったことのないものが用意される。
人見知りのさやかは彼を前にするとまだ緊張して殆ど喋れなかった。彼は残業がちで帰宅は遅く、しかも能弁とは言えなかったから会話らしい会話は余り無かった。
その晩は初日以降初めて食卓を共にした。彼は出始めのさんまの塩焼きにほうれん草のごまよごし、だし巻き卵にぬか漬け、大根の葉と油揚げの味噌汁をテーブルに並べた。どれも玄人はだしの出来栄えで驚くほど美味しい。だが彼を目の前にしたさやかは硬い表情のまま、もそもそ無言で食べている。
『…さやかは何が好きなんだ?』さんまで作ったなめろうをつまみに二本目のぬる燗を手酌で呑みながらのんびり彼は訊いて来た。
『え…』彼のいきなりの質問にさやかはびくっと顔を上げ、ぐっと背筋に力が入る。
『好物は?』肘をついた彼がさやかをじっと見ている。
さやかは小さく座り直し、『え…と…。…唐揚げ…。と、…あと…ハンバーグ…とか…』おずおず答えると彼は面白そうに相好を崩しながら、
『そうか。じゃあ明日は唐揚げにするか?明日の給食はわかってるのか?』
『…と、唐揚げじゃありません』
『じゃあ唐揚げにしよう。さやか、これから食べたいもの、好きなものをちゃんと言え。食事ってのは楽しまないといかん。俺は好き嫌いを克服しろなんてナンセンスなことは言わない。偏食大いに結構。遅かれ早かれ死ぬんだから食べたいもんを我慢してまで健康で長生きなんて全くもって馬鹿馬鹿しいと思ってる。俺の好物も作るけどな。…ま、それも嫌なら食べなきゃいい』お猪口を呷りながら上機嫌でそう言った。
さやかの緊張が少しずつほぐれていく。
『はい…じゃ…あとポテトサラダ…』
『ははは。了解。じゃあ明日はポテサラも加えよう』彼はさやかを見つめて楽しそうに笑った。
さやかはその表情を眩しそうに見つめ返した。


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