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どうして....好きになってはいけないの?
【純愛 恋愛小説】

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二人の間の壁-3

「優羽!朝だ......よ.......」
優羽が居なくなって....季節も夏に変わったというのに....何度....舞姫は誰もいない部屋のドアを開けた事か....ドアを開けては優羽がそこに居ない事を思い知らされて沈んだ気持ちになる....朝食も..母・綾子(あやこ)が用意してくれた物を二人で食べていたのに....今は一人で食べている....自分の半分をどこかに置き忘れて来た....舞姫はそんな淋しさを感じていた....
夜..仕事から帰って来て自分の部屋のドアを開けようとすると....あの日....優羽はどんな顔をしてここに立っていたのか....もしもあの時....舞姫がドアを開けていたら....ついそんな事を考えてしまう....
なぜ....帰って来てくれないの?....もう夏休みに入ったんでしょう....舞姫は部屋で涙を流した....
姉さんの事を忘れるために....あの日優羽はそう言った....もしかして....もう....舞姫には想像したくない事だがつい考えてしまう....優羽が知らない誰かと楽しそうにしているのを....


「優羽君は実家に帰らないの?」
バイト終わりに奥さんが優羽に聞いた。
「別に帰ってもする事がありませんから....」
「そんな事言うもんじゃないぞ!元気な顔を見せるだけで親は安心するんだ!親孝行だと思って顔を見せてあげなさい!」
店長にそう言われて断る事も出来なかったので、優羽は帰る事にした。
「それじゃ...帰る事にします!」
「一週間くらい向こうでゆっくりしてくるといいよ!店は恵がなぜかこのごろずっと手伝ってくれるから大丈夫だから!」
「ちょっと!お父さん!なぜかは余計でしょ!!」
恵が少し怒ったように言うと
「今まで滅多に店を手伝ってくれなかったんだから仕方ないでしょう!」
奥さんが笑いながら言うと
「それを言われると....」
恵は困ったように下を向いた。
「それじゃ...一週間休ませていただきます....」
優羽は8月の中旬に休みをもらう事にした。


優羽が帰って来る!!....優羽から連絡があったと綾子から聞いた時....舞姫は叫び声を上げそうになった....舞姫は嬉しさを隠す事が出来なかった....
「何か良い事があったの?」
職場の先輩が話しかけて来た。
「はい...ちょっと.....」
「あっ...彼氏が会いに来てくれるんでしょう!」
「ええ....まぁ.....」
舞姫は照れくさそうに下を向いた。
舞姫はまだ学生の時に友人達から好きな人の事をしつこく聞かれ、本当の事を言えないので、彼氏と遠距離恋愛をしているという事にした....片思いをしていると言えば....なぜ告白しないのかとしつこく聞かれるだろうし....彼氏がいないとわかれば....いい人を紹介するからとしつこく言われる....だから....遠距離恋愛をしている事にした....就職しても....職場の男性からしつこく誘われたので....遠距離恋愛をしている彼氏がいる事にしたのである....
「久しぶりのデート楽しみね!!」
「はい!」
舞姫は嬉しそうに笑った。


優羽が帰って来たのに二人はすれ違ってばかりだった....舞姫への告白....それが優羽の気まずさを生み....意識的に舞姫を避けていたのだった....舞姫と話しをしたい....その思いは誰より強かったのに....
朝早く目覚めた優羽は冷蔵庫から麦茶を取り出し口にした。
「今日も暑くなりそうだな.....海にでも行きてぇな!」
「今日休みだから...連れて行ってあげようか?」
「えっ?」
後ろから声をかけられた優羽が振り返ると舞姫が立っていた。
「海...行きたいんでしょう!」
そう言って微笑む舞姫を見て、優羽は断る事が出来なかった。
舞姫が運転する車で海へ行く途中....ぎこちなかった会話も元に戻っていた....前のように話せるようになった事に優羽は安心した....
海に着き、砂浜の上にレジャーシートを敷き、その上に荷物を置いた。砂浜は家族連れやカップルで溢れていた。
「早めに出て来て良かったね!!」
舞姫はそう言いながら着ていたTシャツを脱ごうとしだした。


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