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ある警備員の独白
【フェチ/マニア 官能小説】

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―木曜日―-3

それにしても射精まで時間がかかるようになった。量も減ったように感じる。性欲は人並外れているという自覚があったが、最近は衰えを感じないわけには行かない。
まぁ強いのもそれはそれで不自由なものだ。俺くらい旺盛なやつは多少衰えたくらいが丁度良いのだろう。
この研究所はその機能ゆえ、セキュリティーがかなり厳しい。そのため、着荷物・到来品・来客は全て職員の事前申告が義務付けられているから突然の来訪・着荷と言うものはまずありえないし、万一あっても当該職員に受け入れるか否かの確認を待たねばならない。
就職先というものは事前にどれほど調べてもその実態は入ってみるまで分かるものではない。経営に関わる役職でもない限り、勤め人に影響するのは企業規模や事業内容などより、その分かり得ない実態、瑣末な環境のほうが大きいものだ。
俺は第二の職場がここまで集中してじっくりオナニーに勤しめる環境だとはさすがに思わなかった。どこまで俺に相応しい職場なのか。
唯一、不自由なのが昼だろう。ここの警備は早・中・遅は基本的にそれぞれ一人でこなすため、警備室で食事もとらなければならないからだ。出前もセキュリティー上、原則禁止だ。
早番は12時から13時まで職員の出入所のチェックをする都合上、昼飯はその前に済ませる。
11時半になると、俺は電気ポットで湯を沸かしてティーバッグの緑茶を淹れ、持参の弁当を開いて昼食にする。簡便なキッチンにレンジもある。無味乾燥な事務デスクと言うのが玉に瑕だが、自作の一人飯を誰気兼ねなく堪能する。
今日も例によって何事も無く定時が近づき、中番が出勤してきた。
『才賀さん、おはようございます』そう言いながら中番の向谷豊が警備室に入ってきた。五分刈りの短髪に190cm近い堂々たる体躯の30代で警察大学校出身。都内の派出所勤務を経験したのち今の警備会社に転職したと言う。柔道空手共に三段の腕前で、大学時代は剣道でインターハイにも出たそうだ。転職の理由は知らない。
『特に何も無いでしょうかね…』向谷はポットで湯を沸かし、俺と自分の分のコーヒーを淹れ、落ち着いた低音で訊いて来た。熱いコーヒーの入ったマグカップを俺に手渡しながら俺の背後からデスクに手を置き、向谷はモニターを一瞥する。
『…無さそうですねぇ。溝口さやかは相変わらず美しい…と』さやかの映る2台のモニターを上目遣いで見ながらコーヒーを啜った。
『ま、俺は興味もありませんが』思わせ振りな表情で俺を見下ろす。
向谷はどうやらゲイのようで、俺の自意識過剰且つ自惚れなのかも知れないが、俺がここに入った時から事あるごとに秋波を送ってくるように感じる。彼は中々の美丈夫で、さぞかしモテるだろうとは思うが、対象が同性だけとなると恋愛は色々と不自由だろう。とは思いながら、嗜好ばかりはどうにかなるものでもない。
俺は向谷に簡単な申し送りを済ませると、定時に研究所を後にした。研究所裏の駐車場に停めた紺のセダンを駆って山道を下りていく。山あいから見える夕空がいつも通り美しい。薄い菫色から薄紫までのグラデーションを楽しみながらひとまず家に向かう。家で待っているグレイハウンドのハウザーを散歩に連れ出してやらねばならないのだ。うちは昔からグレイハウンドを飼っており、ハウザーは俺がガキの頃にいたボウという雌のひ孫だ。
ハウザーをピックアップしたら散歩がてらスーパーで買い出しである。エンジン音が近づいただけでハウザーは嬉しそうに尻尾を振り、小さく一声吠えた。既に体長70cmを超えているがまだ1歳半、人間で言えば高校生。遊びたい盛りだ。

帰宅してハウザーを庭の巨大ケージに入れてやる。高さ1.5m、幅・奥行き2mという閉塞感を極力なくした特注品である。夏と冬は家に入れるが、春・秋は外に出す。
くぅぅん…と名残惜しそうに一鳴きするが、あいつはそれだけである。グレイハウンドは元々大変頭がよく毅然として上品。一緒に暮らしてこれほど心地よいパートナーはいないと言っていい。
6時頃からのんびり缶ビールをあおりつつ、つまみを作って食べながら、残った飯にゆかりを混ぜ、好物の豚のしょうが焼きを作って色とりどりの野菜にオリーブオイルを塗ってオーブンで焼く。これをタッパー仕様の弁当箱に入れて冷蔵庫に入れる。翌朝これに作り置きの惣菜を足せば明日の弁当は完成である。
学生時代からずっと自炊して来たので料理は全く苦にならない。寧ろ仕事から解放されたあとに立ち寄るスーパーでの買い出しはささやかな楽しみだ。ましてや5時から就寝の11時頃まで長いフリータイムである。接待や付き合いの呑みがあるわけでもなく、鄙びた土地柄ゆえ繁華街もないから夜遊びできるクラブも風俗もない。夕食作りと翌日の弁当の仕込みは数少ない貴重な気分転換だ。

さて、ほろ酔い加減で腹も落ち着いたところで、PCを立ち上げるとするか。
俺のもう一つの楽しみは、隠し撮りを観ることだ。
小さな職場の警備を始めて半年もすれば、それぞれの職員のルーティン、動向、クセはあらかた把握できる。
“職場のマドンナ”、さやかは決まった個室で用を足す。男性13名、女性4名でありながらトイレは1階・2階に男女それぞれ平等に1箇所ずつだ。女性トイレにはどちらにも3つ個室があるが、あの女は自分の仕事部屋のある2階の一番奥の個室しか使わない。俺はその個室に隠しカメラを二機設置した。
便座内に一機、壁面の角に一機。いまどきのカメラは相当感度が良い。しつらえた小型カメラは暗部もクリアに見えるタイプで、便座内のものには入念に防水を施し、ウォシュレットのシャワー噴出口の裏側に忍ばせた。カメラの色は白にしたのでどちらも完全に周りに同化し、清掃員も気づくとは思えない。
それぞれのSDカードを朝の見回り時に回収し、新しいものと取り替える。


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