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侵略
【SF その他小説】

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〜侵略〜-3

 「‥結論から言って、我が軍の兵器では太刀打ちできないと判断致します」
 「なんだその報告は!貴様ら膨大な資金を費やして、一体何をやっとたんじゃ!」
 激高する将軍に、科学者は顔を歪めて反発する。
 「ならば、はっきり言ってやろう、敵軍の科学力は我々より何世紀も進んでいるんだ。この兵器に有効な武器は我が軍には存在しない。それどころか、我々には素材すら解明できないんだ」
 「素材すらわからんだと?貴様らは無能の集まりか!」
 「チタニウムベースの合金であることまでは解明した。だが、これに使われている金属元素はこの惑星にはない未知のものだ。この設備も時間もない状況で、どうやって調べろと言うのだ!」
 「‥ぐっ‥む‥」
 「大体あんたら軍部がもう少し敵の侵攻を食い止めてれば、こんな結果にならなかったんだぞ。いったい初戦の損耗で、どれだけの重要な科学施設が壊滅‥」
 「もうよい、止めよ」
 静かな声が、二人の争いを制する。参謀長官は気色ばんだ分析班長に話しかける。
 「班長、まず貴方に言っておこう。我が軍が未だに軍の体裁を保っていられるのは、ひとえに将軍のおかげだ。彼は初回侵攻時に戦力差を見てとるや、冷静に撤退の断を下したのだ。南方軍は初戦で無謀な突撃を繰り返し、いち早く壊滅したぞ」
 「それは臆病風に吹かれただけじゃ‥」
 「口を慎み給え、彼は常に防衛を最優先に指揮を下している。君は鉄の意志を持って、仲間に死守を命ずる者の気持ちがわかるか?」
 分析班長は声もなく視線を逸らす。
 「将軍、貴方も落ち着きたまえ、科学班とて遊んでいるわけではない。」
 剛毛の生えた腕を振り上げ、今にも掴みかからんばかりだった将軍は二の足を踏む。
 「君達が敵の兵器を回収して以来、科学班は戦況を打開するため、不眠不休の努力を続けてきたのだ。努力の末、成果が得られない悔しさは、君も身に染みていよう」
 将軍は何か言いかけたが、同期である参謀長官に口でかなわぬことを承知していた。憮然とした表情は崩さないが、荒々しく腰を下ろす。
 組織間の折衝を役割とする参謀は、その役目を果たしたが、場の空気は見てとっていた。
 「諸君、我々に残された時間は少ない。会議も迅速に行うとしよう。科学研究班で、何か有益な成果を上げたものは報告願いたい」
 再び、沈黙の帳が会議室を包み込む。誰もが他部門の顔を窺い、自ら名乗りを上げようとはしない。
 「僭越ながら、参謀長官殿に進言致したい」
 非生産的な無言行を打ち破ったのは、並みいる科学陣の中でも最高齢の生態研究学者であった。この分野では革新的で天才と称された老教授であるが、彼の口から出た言葉は、居並ぶものに希望を与えはしなかった。


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