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hangover
【OL/お姉さん 官能小説】

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コロと教育係-4

「たぶんとっくに終わってたのよ。でも私は認めたくなかった。いつか結婚するって思い込んでた。でもフラれちゃった。他のヒトとね、結婚するんだって。お前は一人でも大丈夫だけど、そのコはオレが守ってやらなきゃダメなんだって言われちゃった」

言葉にしたら涙が出てきた。なんで西島の前で泣いてるんだろう。みっともない。

「榊さん…」

ふわっとあったかいものに包まれる。それが西島だと気づいて慌てて離れようとするけれど、西島は離してくれない。

「ちょ、ちょっと…」

「泣きたいときはちゃんと泣いたほうがいいです。オレに見られたくないならこのまま泣いてください。榊さんが自分の中に閉じ込めてるもの、この際だから全部出しちゃってください。オレがちゃんと聞いて受け止めますから」

西島のあたたかさに一度決壊してしまった涙腺から、次から次へと涙がこぼれていく。彼から言われたことすべて、気がついたら泣きながら西島の胸の中で吐き出していた。それを聞いて自分がどう思ったのか。事の顛末すべて。西島は黙って聞きながら、時々相槌を打ったり、促してくれたり。泣きながら話すから聞き取りづらいだろうに。穏やかに私の背中を撫でて、髪を撫でて。

「ごめん…シャツ、ビショビショにしちゃった…」

全部出し切ったら、ようやく落ち着けた。泣き顔は見られたくなかったけれど、きっと冷たいのに我慢してくれてるんだろうなと思ったら、ちゃんと顔を見て謝ることができた。

「そんなこと気にしないで大丈夫ですよ。洗濯すればいいんですから」

長い指で優しく私の涙を拭うと、頭をまるで泣いている子供をあやすように撫でる。その表情が普段と違って大人びていてなんだかドキっとする。

「少し、落ち着きました?」

「うん…ありがと…」

「ホットミルクでも入れましょうか?身体冷えちゃっただろうし」

「…お願いします」

ずっと私を抱きしめたままでいてくれた西島が離れていくと、寂しい気さえ感じる自分の心境に自分で驚いてしまう。手際良くキッチンでマグカップに牛乳をそそぎ、電子レンジで加熱する西島の動きになんとなく見とれてしまう。

「はい、熱いから気をつけてくださいね」

「ありがと…おいし…牛乳だけじゃないよね?ココア?」

「えっと。板チョコひとかけら入れてみました」

「そっか。ホットミルクなんて久しぶりに飲んだ。おいしいね。ウチでもやってみようかな」

「ぜひぜひ」

そう笑うと西島は電子レンジで温める時のコツまで教えてくれた。

「なんか意外」

「そうですか?もしかして惚れちゃいました?」

いつものおどけた西島についつられて笑う。

「少しね」

「じゃぁ、オレにしませんか?」

「へ?」

ふいに真剣な顔で尋ねられたから、思わず間抜けな声が出てしまう。

「この状況で口説くなんて、なんか榊さんの弱みに漬け込んでるみたいで卑怯ですけど。オレ、本気ですよ?ずっと榊さんのこと好きでした。相手にされてないのはわかってましたけど。オレは年下だし頼りないかもしれないけど、榊さんのこと泣かせたりしません。榊さんのこと全力で守ります」

「西島…」

再び西島に抱きしめられる。

「…オレのこと、嫌いですか?」

あぁ、そんなに切ない声で訊かないで。胸の中で首を横に振る。

「嫌いだったら、飲みにいったりしない。でもそれは恋愛感情とは違う気がする…っていうか、今まで西島をそういう対象として見たことない…」

「そりゃそうですよ。それはもうわかってます。でも恋愛ってそういうもんじゃないですか?最初から両想いなんてそう滅多にあることじゃないですよ」

「まぁ、そうだけど…」

「じゃぁ、オレにしといてください。もし榊さんに本当に好きなヒトが出来た時にはオレちゃんと身を引きますから。それまでオレに榊さんのこと守らせてください」

ぱっと私から離れると土下座をする。

「や、やめてよ。土下座なんて」

大丈夫、真剣に言ってくれてることはちゃんと伝わってるから。いつもみたいにおちゃらけて言ってるわけじゃないのもわかるから。でもね、迷うよ。なんて答えていいのか。西島はイイコだから。私なんかよりちゃんと西島のこと想ってくれる子のほうがいいんじゃないか、とか。他の男に失恋してすぐに、慰めてくれた男の元に恋愛感情もないのに逃げ込むのは違うんじゃないか、とか。それに社内恋愛なんてしたことない。もし周りにバレたらどっちかが飛ばされるんじゃないか、とか。西島と一緒に仕事が出来なくなるのはイヤだとか。断ったとしても、月曜日からどんな顔して西島に会えばいいんだろう、とか。でも、西島の気持ちはすごく嬉しくて。さっきまでのあたたかさが既に恋しいとさえ思う浅はかな自分もいて。

「ねぇ、西島ってば。頭上げて?ねぇ、ほんとに私なんかでいいの?」

「私なんか、なんて言わないでください。オレは榊さんがいいんです」

「だって、私口悪いよ?人使いだって荒いよ?素直じゃないよ?」

「知ってます。そんなの全部知ってて、それでも榊さんがいいんです。こんなオトコ、もう榊さんの前に現れないかもしれないですよ?今がチャンスですよ?オレにしておいたほうがいいですって、絶対」

「…わかった。西島を彼氏にしてあげる」

「上から目線な榊さんが大好きです」

西島はそう笑うとふっと真顔に戻る。次の瞬間、西島の唇が私の唇に触れた。

「やった。榊さんとキスしちゃった」

「さっきもしたって喜んでたじゃない」

「さっきのは間接チュウだからノーカウントです。彼氏になったんだからこれからはヤリたい放題ですね」

「ヤリたいって、アンタねぇ…やっぱり却下するわよ?」

「却下もさせないし、後悔もさせませんから」


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