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hangover
【OL/お姉さん 官能小説】

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コロと教育係-1

「おはようございます」

なんでコイツは朝からこんなに元気で爽やかなんだろう。毎日キラキラした人懐っこい笑顔。悩みなんてないんじゃないだろうか。時々、コイツの前世は超人懐っこい犬だったんじゃないか、って思う。きっと尻尾が生えてたら誰か顔見知りに会うたびに全力で尻尾ふっちゃうような、そんなヤツ。

「…オハヨ」

「榊(サカキ)さん、また二日酔いですか?」

「みりゃわかるでしょ。っていうか『また』ってアンタほんとに一言余計」

ジロリ、と睨んではみたものの、コイツには全く効果なかったんだ。仕方なく手にしていた缶コーヒーを口に運ぶ。いつからだろう。ブラックのコーヒーが飲めるようになったのは。ビールが美味いと思うようになったのは。そして飲みすぎては翌朝ひどく後悔するようになったのは…

「最近毎日じゃないですか?身体壊しちゃいますよ?」

…やっぱり人の話を聞いていないらしい。おまけにご丁寧に人の目の前に腰を下ろし、下から心配そうな顔でこちらを見上げている。あぁ、やっぱり犬だ。昔実家で飼ってた雑種のコロを思い出す。あんまりお利口なコじゃなかったけど可愛かったな、コロ。

「コロ、うるさい」

「はい?」

「あ、違った。コロはウチの実家で飼ってた雑種。アンタ、コロにそっくり」

「え?オレ、犬ですか?」

しまった。妙にテンション上げさせちゃったよ。思わず頭を抱えたくなる。

「オレ、榊さんの犬になりたいです。可愛がって…」

「断る」

「ヒドイです。そんな速攻で拒否らなくてもいいじゃないですかっ。せめて最後まで言い切らせてくださいよー」

「可愛い男なんていらない」

あぁ、面倒くさいなぁ、もう。頭ガンガンしてるし相手する元気ないんだけどなぁ。ちょっと、なんでそんな傷ついたような目でこっち見るのよ。

「榊さんの好みの男性ってどんな人ですか?」

「はい?なんでアンタに教えなきゃいけないわけ?」

「えー、だって気になるじゃないですか」

やっぱり彼の後ろに尻尾が見える。かまってかまって、ってブンブン揺れる尻尾。全力で、遊んで遊んで、って問いかけてくるキラキラした瞳。コロの生まれ変わりか?ってあぁ、コイツのほうがコロより先に生まれてるか、いくらなんでも。

「オトナのオトコ。年上限定。以上」

あ、あと誠実な人がいい。ウソつかない人。浮気しない人。男性にソレを求めるのが酷なのかもしれないけど。ってまたなんでそんな目で見るの?構ってもらえなくって悲しいって書いてあるような顔しないでよ。尻尾の動き止めないでよ。

「ほら、もうすぐミーティング始まるわよ」

腕時計をチラリと確認して、ハッとする。胸が痛い。気がついてしまったら今すぐにでも外してしまいたくなったけれどこれから仕事だと思うとそうもいかない。深いため息をひとつ。そうだ、今日は帰りに腕時計を買いに行こう。この際だ。洋服も下着も新調しよう。そんなことを思いながら立ち上がろうとすると違和感を感じる。

「さ、榊さんっ、大丈夫ですか?」

立ちくらみってヤツだろうか?コロ、じゃなかった西島悠貴(ニシジマユウキ)が慌てて私を支えてくれた。

「あ、ありがと。ごめん、大丈夫だから」

華奢だと思っていた長い腕が意外にがっしりしていることに思いの外動揺してしまう。

「顔色悪いですよ」

「だって二日酔いだから。大丈夫よ、これくらい。ほら、ミーティング遅れるとまた説教されるわよ」

「…はい。でも榊さん、あんまり無理しないでくださいね」

「アリガト」

そう答えると西島の眉間によっていたシワが少し緩和された。無理、かぁ。無理してるのかな、やっぱり。いや、そんなこと考えてる場合じゃない。仕事しなきゃ。喫煙所を出るとミーティングルームに向かう。その後ろを西島がついてくる。足だって長いし、歩幅だって私よりかなり大きくて簡単に追い抜かせるはずなのに、私を気遣ってか、少し後ろから心配そうな視線を感じる。優しいコだ。チャラ男っぽいキャラだけど憎めないのはこういうところを知っているから。実際業務が始まってからも何かと私の体調を気にかけてくれていた。

でも。定時間際になって西島の痛恨のミス発覚。最初にクレームを受けたのが自分だったこともあり、こんな時に限ってウチの上司が不在で西島を連れて先方へ謝罪に行く羽目になってしまった。

「榊さん、本当にすみませんでした」

なんとか謝罪を終え、新規受注までいただいて先方を後にした時にはもう20時近かった。コロ、じゃなかった。西島の見えない尻尾はこちらまで悲しくなるくらいだらーんと下がってしまっている。西島にしつこいほどお詫びに奢らせてくれと懇願され、奢られるのは勘弁だから割り勘で飲みに行くわよ、と連れてきた居酒屋でも、珍しいほど西島のテンションは下がったままで謝り続ける。

「次回から気を付ければいいことよ。先方もそう言ってくださったんだし」

「はい…でも榊さんまで巻き込んじゃって」

「そんなの仕事してればよくあることよ。自分のミスじゃなくても怒られる時は怒られるし、フォローが必要であればしっかりフォローする。それは西島のためじゃなくてお客様の為、会社の為よ。あのねぇ、しっかりしなさいよ。いつまでもミスを引きずらないこと。逆に今日のことを教訓にして二度と同じ失敗しなきゃいいんだから」

なんで私はジョッキ片手にコイツに説教してるんだろう。まぁコイツの教育係だし仕方ないのかな。

「そう…ですよね…」

「あぁ、もうっ。いつまで落ち込んでんのよ。そんな落ち込んだ顔で飲んだり食べたりしたって美味しくないし、せっかく作ってくれた人やお店に失礼よ。シャキッとしなさいよ」

カウンター席。隣に座った西島の背中をバシンっと叩く。


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