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眠れない妻たちの春物語
【SM 官能小説】

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眠れない妻たちの春物語(第一話)-5

一ヶ月後、私あての一通の手紙は、ムラタさんからのものだった…。


カズエ様へ…

あのときは、突然、スイスに帰国したことをおゆるしください。
もう少し日本に滞在し、あなたとのひとときをすごしたかったのですが、急な仕事が入り、ほん
とうに残念です。

妻は、一年前、チューリッヒの国立病院で最後の息をひきとりました。たしかあなたと同じ年齢
だったと思います。

いつ頃からなのか定かではありませんが、妻は、私が気がつかないところで、不治の病に冒され
始めていました。妻は、ほんとうに病気なのかと思えるほど元気でしたが、やはり病に勝てるこ
とはできませんでした。

ひとまわりも歳が離れた妻と結婚したのは七年前です。妻は初婚でしたが、私は再婚でした。
私がスイスのオーケストラ楽団の仕事をしているため、私たちは、ずっとスイスで過ごしてきま
した。ほんとうに平穏な日々だったと思います。


それは、突然襲ってきた悪夢のような妻の病でした…。

妻は自分の病気を知り、ふさぎ込む日が続きました。そして、余命が短いと知った妻は、ある日、
どうしても東京に行き、ある人と会いたいと言い出しました。昔の恋人だと言いました。

私は信じられませんでした。夫である自分という存在が、なにか足元から揺り動かされるような
感情に襲われました。


私は、年甲斐もなく烈しい嫉妬にかられる日々が続きました。

妻とあなたのご主人とのあいだに何があったのかはわかりません。妻は、あなたのご主人があな
たという女性を結婚の相手に選んだことに、ひどく傷つき、自殺未遂をするまで追いつめられた
らしいのです。

そんな妻が愛おしくもあり、自分を捨てた元の恋人に会いたいなどと言うことが、私にはとても
理解できませんでした。


でも、私は妻の最後の願いをどうしても受け入れなければなりませんでした。そして、妻は私を
振り切るように東京へ向かいました。

残された私は、胸を締めつけられるような思いで、夜も眠れなかった。私はどうしても、妻の恋
人だったというあなたのご主人を知りたかった。そして、私は知り合いの興信所を使い、ホテル
での逢瀬の隠し撮りを依頼したのです。そんな卑劣なことはしたくなかったのですが、私は、
あなたの夫である男性を、自分自身のために知る必要があると思いこんでいたのです。


そして、あの隠し撮りされた映像を見たとき、私は、自分の目を疑いました。

自分だけが取り残された孤独と焦燥感を強く感じました。
縛られ、鞭を打たれる妻の姿…それが、愛し合う男女の姿であるとは、とても思えませんでした。
でも、妻の恍惚とした深い悦びに充ちた表情を、私はこれまで見たことがありませんでした。
これが妻の望んでいた愛の姿なのかと、私はずっと悩み続けました。



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