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刻を越えて
【SF その他小説】

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刻を越えて-7

翌日、僕は連勝記録を三桁に伸ばした。
「ゆうちゃん、雑誌の人がインタビューしたいんだって。」
「はぁ?やめてくれよ、そんなのガラじゃないって。」
「いいから、いいから。」
半ば無理やりに圭子に連れられて記者の前に来た。
「初めまして。**社の新田と申します。百連勝達成おめでとう。」
「はぁ、ありがとうございます。」
新田という人は、典型的な記者だった。
歯の浮くような褒め言葉を続けた後に、本題に入った。
「強さの秘訣は何かな?やっぱり才能なの?」
生まれながらにして持ったものが才能と言うなら、そうだろう。
昨日のやりとりで、僕は自分の前世がおぼろげながら見えてきた。
前世の僕、竹丸は人とは思えないほど過酷な修行の末、鬼人の称号を得た。
その動きを、今の僕が受け継いでいる。これを才能の一言で片付けられるのか。
「・・・・」
「ちょっと難しい質問だったかな。じゃ、君の当面のライバルは?」
記者はあわてて次の質問に移った。
どうやら僕は難しい表情をしていたらしい。
「ライバル?」
「今の君には、ライバルは存在しないのかな?」
存在しなかった。
だからつまらなかった。
けれど、今は奴がいる。
だから。
「いますよ。終生のライバルが。」
「またまた、終生は言いすぎじゃない?」
「いや、それ以上ですよ。最近、死合をしましたし。負けそうでしたよ。」
「えっ、いつ試合をしたの?その人の名前は?」
名前?そういえば聞いていなかったな。いや、聞く必要も無いか。
僕にとって奴は佐之介であり、彼にとっての僕は竹丸でしかないのだから。
「名前は伏せておきます。強いて言うなら、神に近い男です。」
そうだ、彼は神の子。
僕を罰しに来るだろう。彼が言う罪とは、彼を殺したことか?
ならば、僕の死が、彼の「罰する」、ということか?それとも別の・・・・。
まさか、傍らの女に手をかけたことか。
・・・圭子と一緒にいる事は危険だ。
復讐ということならば、奴は必ず大事なものを奪いに来るのだろう。
もし僕が敗れたとしても圭子を殺す事はできないだろうが。

 「ゆうちゃん、どうしたの?今日はボーーーとしているね。」
帰途に着いたとき、圭子が言った。
「そうか?」
「さっきのインタビューで言っていたライバルって?」
「ん・・・聞いていたのか。」
少しムッとした表情で、圭子は言う。
「ゆうちゃんの試合は全部見てるけど、そんな人本当にいるの?ここ何試合も本気すら出していないくせに。」
圭子は気付いていたのか。
剣道という枠では、僕を止められる者はもういない。
僕に快感を与えてくれる敵は、奴だけ。防具も竹刀も必要ない。
「その人と戦う時は、呼んでよ。全部の試合をチェックしなきゃ。」
「駄目だ。俺たちがやるのは試合じゃない。」
殺し合いだ。
「何で?私がいない所で何があったっていうのよ。」
女の勘か。僕の心の中の変化を、圭子は見抜いている。
しかし、このまま圭子と一緒にいるわけにはいかない。奴は近いうちに必ずくる。
「そういえば明日から僕、叔父の家に行くんだ。」
「はぁ?何言っているの。学校は?」
「急用なんだ。叔母が危なくてね、優しくしてもらっていたから、逝くまでは一緒にいてくれって叔父が・・・」
つらい、という表情。うまく顔に出てくれたであろうか。
圭子は言葉を無くしていた。
「そう・・・、分かった。じゃ、・・・またね。」
卑怯な方法だけど、仕方ない。
圭子は巻き込みたくない。
これ以上、苦しませたくない。
僕が死んでしまえば、彼女が悲しむだろう。彼女の微笑みは消しはしない。
でも逃げもしない、奴と戦う。もし、奴を殺してしまったら?
決着に死は必然だ。しかし時代はあの頃とは違う。
「どちらに転んでも、割に合わないよ。」
どうにかして、両者無事に決着がつかないだろうか。
家に帰り、僕宛に届いた切手も名前も無い封筒を開ける。
        
明日 午後七時 **公園


あぁ、両者無事の決着なんて有り得ない。

――― だって喉がこんなにも熱いから
――― 鬼の血が、こんなにもドクドクとうるさいから

前世を抑制する事はできない。それは僕たちの基盤だから。
「ああ、違う、違うな。」
抑制できないのは、今の僕だ。前世なんて関係ない。
僕は快感を味わいたいだけ。
彼を・・・・コロシタイダケ
鬼化は刻を越えても止まらない
今の僕は人の顔をしているだろうか?
そんな事を、手紙の場所に向かう途中、考えたりした



坂本悠一偏(2)了


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