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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-37

「見えてきたな………」
 運転席の隊長が、口を開いた。山を越え、変前林が見えてきたのだ。
すでに日は沈みかけており、夕日が木々を赤く染め上げている。
「お…警備隊も見えてきたぜ。」
 シヴが、気楽そうな口調で言う。
その言葉の通り、街道の先にはバリケードと、六機程のワーカーが見えてきていた。
そこから先は通行止めなだけあって、何もなしに突破することはできないだろう。
「レイヴァリーには既に連絡してある。レイヴァリーまである程度近づけば、救援を寄越してくれるそうだ。さすがに、余りこちらに回せる兵力はないらしい。」
 隊長の話を聞くうちに、トレーラーは段々と警備隊に近づいて行く。
向こうもトレーラーを確認したらしく、動きが出てきた。
「それじゃ、行ってくるわね〜」
 軽く言って、ローラが席を立つ。
彼女は別働隊で、トレーラーを行かせるために警備隊をかき乱すのだ。
「よし、俺も行ってくるぜ。」
「いっちょやってやるか!」
 同じく別働隊のシヴとヲルグも席を立つと、シートを外して中から銃などを取り出す。
「頼んだぞ。」
 短く言った隊長の声を受け、三人は減速したトレーラーから飛び出し、それぞれの方向に散って行く。暗くなってきている上に、今はトレーラーが注意を引いている。
見つかる事は無いだろう。それを目で追うレイチェ。
「…あ、あの………私は……」
「とりあえず、シートを直しておけ。」
 オドオドする彼女に短く隊長は答え、前を見据える。
サーチライトで、警備隊のワーカーがトレーラーを照らした。
トレーラーはゆっくりと前進し、警備線に近づいていく。
『そこのトレーラー、止まれ!』
 ワーカーのスピーカーから、男の声が響いた。
トレーラーは、指示に従い停車する。
サーチライトの向こうから、幾つかの人影が近づいてくる。
「…………」
 レイチェは緊張でガチガチである。このままでは怪しまれてしまう。
ついでにシートもまだ直していない。
「落ち着け。」
 ぼふっと、エリックがレイチェの頭を叩く。
「は、はい……」
 幾分緊張を解きレイチェは答えたが、やはりまだ少し表情が優れない。
まぁそれも仕方の無いことだろうと、エリックは視線を前に戻す。
人影達は小銃を構えながら、トレーラーの傍まで近づいてくる。
人数が視認できる距離まで来る。
その数、五人。
「全員、トレーラーから降りろ!」
 一定の距離を置いて、近づいて来た兵士が声を上げた。
「了解した!今から一人ずつ出る!」
 隊長は応えて言うと、エリック達に目配せして車外へと出て行く。
エリックは黙って頷き、シートを直す。
その間に、レイチェを外に出すのも忘れない。
そしてギザが出て行くのに続いて、エリック自身も外に出る。
外では、隊長達がきちんと手を上げ一列に並んで、大人しく包囲されていた。
エリックもボディチェックを受け、それに並ぶ。
兵士達の二人が、トレーラーの貨物部分を調べに向かう。
「現在ここは立ち入り禁止だ。何の用でここに来た?」
 詰問口調で、兵士が尋ねた。まぁ、実際詰問しているのだが。
「ここの警備隊に物資を届けてくれと、依頼されてな。補給ではないのか?」
 しれっと、隊長は言う。
相変わらずレイチェの顔色が悪いが、銃を向けられているからだという事で大丈夫だろう。
「中身は、殆ど食料や雑貨などのようです!」
 貨物を調べていた兵士達が、戻ってきた。
「ふむ………ちょっと待て。確認を取る。」
 そう言い、詰問していた兵士が通信機を取り出す。
「トレーラーの中身は普通の物資だ。持ち主によると依頼を受けてきたらしい。何か、補給等の連絡は入っているか?」
 兵士は通信相手に尋ね、その報告を待つ。
と、その時。突然ワーカーのサーチライトが消えた。
同時に響く爆音と銃声。


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