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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-36

第十二話 《変後暦四二四年二月十八日》

 うららかな日差しが差し込むトレーラーの中。
今日も今日とてエリック達はトレーラーの中に居た。まぁ、当然の事なのだが。
「……あと幾つか山を越えた所に、レイヴァリーはある。予定より早く着きそうだな。」
 運転手を務めている隊長が、正面に見える山を見ながら後ろの面々に向けて言った。
その横では、ギザが寝ていたりする。
ちなみに今トレーラーが通っているのは、今まで通ってきた街道から少し外れた道だ。
あのまま街道を通っていけばレイヴァリーの北ゲートに突き当たったのだが、如何せん大きな街道だけにナビア軍のチェックが厳しい。ナビアがジュマリアの首都を陥落してから一ヶ月。レイヴァリーはその間、ナビアの正規軍に対抗し続けているのだ。
さすがは世界に誇るジュマリアの最新技術を生み出す場所、といった所か。
ともかく、正面の街道からレイヴァリーに近づくことは到底無理な為、レイヴァリーの周囲七キロを囲む警備網が最も薄い(らしい)南ゲート方面から回り込む事にしたのだ。
ちなみに南の警備網が薄いというのは、レイヴァリーの地理的状況に起因する。
レイヴァリーの北には開けた荒野が広がり、見晴らしも良いので、大部隊で攻める事も容易である。特に、ジュマリアの正規軍やテクノロジーを、殆ど反抗軍に持ってかれた状態のナビア軍に於いては、質より量。圧倒的な戦力で正面から叩き潰す戦法を得意とするので、下手な小細工の出来ないこの地形はありがたいのだ。
一方南方面は、山と森に覆われている。起伏が激しい上に、その一帯に広がる変前林はとても攻略しづらい。
変前林とはその名の通り、変前から残っている森である。
『滅びの風』に耐え抜き、進化したその森の木は非常に硬質且つ火に強く、ワーカーによる枝払いがとても困難だ。加えて変後の森と比べて木の背丈が小さく密集しているため、ワーカーが進軍する事が不可能に近いのだ。
当然歩兵部隊なら進軍可能だが、それでも大人数を送り込む事は難しい。大人数を派兵した所で、ばらけて進軍している所を各個撃破されるのが関の山である。少人数では、そもそもレイヴァリーを攻略できないだろう。
そんな訳で、レイヴァリー南に駐屯しているナビア軍は比較的少ないのだ。
「ん〜〜、身体なまっちゃうわよ……立ち入り禁止エリアまではどのくらいなの?」
 くた〜っと、そのまま溶けてバターにでもなりそうな伸びをして、ローラが尋ねる。
ちょくちょく休憩を取っているとはいえ、さすがにトレーラーの中でずっと過ごしているのは窮屈らしい。しかし、それにしても緊張感がなくなっている。
「あの山を越えた辺りだ。変前林手前に、警備網が敷かれているらしい。」
 前方の山を指し、淡々と答える隊長。隊長の情報は、大抵間違いない。
「ってことは、もう少しね……」
 少しだけ元気を取り戻し、ローラが言う。
その言葉の通り、トレーラーが山に入るまでは、あと僅かだった。


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