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HOLIDAY
【女性向け 官能小説】

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HOLIDAY U-2

チャイムがなって入ってきたのは息子の悠太を抱えた涼ちゃんだけだった。

「あれ?姉貴は?」

姉貴は僕と同じバーで働いている。なので今日は姉貴も休みの筈で。

「出てったの…」

出てったって…。実家もない姉貴にいくとこなんか無い。
僕らに父親はおらず、母は他界している。
実家と言うべき場所などないのだ。

「店は?」

この場合の『店』はバーの方。
涼ちゃんのケーキ屋は自宅だから。

「行ってみたけど、車なかったし。」
「車で出たのか……」
「うん…」

友達の家とかに転がり込んでるのかな。
そうなると、僕よりはこいつの方が交友関係は分かってる筈で。

なにもなくてもニコニコしているような男が神妙な顔をしている。

「仕事から上がったら、『はい』って悠太渡されて、出て行っちゃった」
「はあ?」

要領を得ない。

鍋はすでにカセットコンロの上にセットされていた。

そして涼ちゃんから下りた悠太は走り回り、僕と一緒に暮らしている美里さんが追いかけていた。

「悠ちゃん、お湯沸いてるから走っちゃダメー」

……。
なんだかな。

「とりあえず、用意出来てるから上がれよ」
「うん」

ひとまずは水炊きを食った。
悠太を中心に談笑。
涼ちゃんが取り皿に入れて食わすが、自分で鍋から取りたがってアブナイ。

「あれはアチアチなの」
「ふーふーするー」
「だーめー。お皿に入ってるでしょ。コレをしなさい」

涼ちゃんの膝の上で、そんな攻防を繰り返していた。

「悠ちゃん、おいでー。一緒に食べよう」

美里さんが呼ぶとちょろりと美里さんのひざに座った。
涼ちゃんと同じことしてるのに、今度はオトナシク食ってる。

「あ、女の子がいいのね。なんか傷つくなあ」

などどアホな感想。

「じゃあ、本題に入るけど……。オマエなにやらかした?」
「なにって、たいしたことじゃないよ。なのに、もう4日も口きいてくんないの。はいとか嫌とか、知りません。ぐらいしか言わないのよ。ウチって起きてる時間と寝てる時間が逆転してるじゃん。も、すれ違い生活」

そりゃあ、うちだってそうだ。夜の仕事と昼の仕事。合わそうとしなけりゃ、簡単にすれ違う。
僕と姉貴はバーで働いているから、ケーキ屋の涼ちゃんや、OLの美里さんとは行動時間がズレているのだ。

「だから、なにした?」
「だから、ちょっとした睦言だよ」
「……。それでなんで怒るんだ」

頭痛くなってきた。これは犬も食わないっていう馬鹿馬鹿しいパターンらしい。

「わかんないよ」
「……。あやまり倒したら?」
「もうそれはすぐやったよ。けど、『あんた、ホントに悪いと思ってないでしょ!』ってきいてくんない。結局、できなかったし」
「……」

なんの話だ?もう、深入りしたくない。

「ねえねえ、美里ちゃん。圭ちゃんはそういうとき面白いこといったりする?」
「え?」

今度は美里さんに話しかける。全く、この夫婦は揃ってアケスケすぎる。
姉貴も前に遊びに来たときに、二の句の継げない話を美里さんに振った。
だいたい『そうゆうとき』ってなんだ?

「そっちに話を振るんじゃねえ」
「ああ、圭ちゃん、古風そうだもんね」

だめだ。引きずられる。


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