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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-15

「気前がよろしいですな」
 それにも動じない……動じていてもそんな気配を微塵も感じさせないとは、見事なものだと深花は感心する。
 場に参加していいから成り行きには口を閉じていろとティトーから念を押されたジュリアスは、報酬を聞いて動揺している深花の肩に手をかけた。
 ジュリアスに対する押さえとして隣に立っていた深花は、それで冷静を取り戻す。
「……彼、引き受けてくれるかしら?」
「そう信じたい所だ」
 報酬の交渉に入った二人を眺めながら、ジュリアスは答える。
 断る気なら、こんな交渉には入らないだろう。
 デュガリアは、頭の回転も悪くなかった。
 鋭い舌鋒に手応えを感じているのか、ティトーの表情が輝いている。
 上官三人はついていけないスピードで交わされる激論に、唖然としていた。
「よし、これでいいな?」
「まあ、異存はないでしょう」
 どうやら折り合いがついたらしく、二人は握手した。
「よし。じゃあザッフェレル、俺達四人でダェル・ナタルに乗り込む」
「と、その前に」
 デュガリアが、深花を見た。
「少しお話させていただいてもよろしいですか?」
 自分を指名されて深花は驚いたが、すぐに頷いた。
「では、こちらへ」
 デュガリアは深花を連れ、執務室を出た。
 扉から少し離れた所で足を止め、デュガリアは深花と向き合う。
「……で、お話は何ですか?」
 首をかしげて問い掛ければ、デュガリアは深花を壁に押し付けて抱きすくめた。
「ずいぶん積極的ですね」
 深花はそう呟き、されるがままになっている。
「抵抗しないのですか?」
 意外そうな口調で尋ねながら、デュガリアは深花の頤に指を滑らせた。
「他の男を好きな女に無理強いするほど、無体な方には見えませんから」
 答を聞いて、デュガリアはくすりと笑う。
「その通り。無礼をお許し願いたい」
 抱擁から解放され、深花はため息をつく。
「なんだってこう、知り合う男の人は私に触りたがるんでしょ?」
 深花のぼやきに、デュガリアは驚いた。
 どうやら彼女は、自分の魅力を理解していないらしい。
「神機チームのお二方以外に、どなたがあなたに触りたがったんです?」
 質問に、深花は一瞬視線を泳がせた。
「……この間お亡くなりになった、同じ神機パイロット候補生のクゥエルダイドとかその教官のアパイア伍長とか」
「……あー」
 心底納得し、デュガリアは声を出す。
 粗野とか野卑とかいう表現がよく似合う、自分とは相容れない気性の男が先日ジュリアスの手にかかって殺された事は、一部にしか知られていない。
 パイロット候補生としての訓練の他に能力を見込まれて他言無用の上級事務を手伝う事の多いデュガリアは、たまたまそれを知っていた。
 深花が関わっていたというのは予想の範囲外だったが、そう言われると非常に納得する。
 深花を巡って悶着が起き、その過程であの短気男がブチ切れて殺害に及んだのだろう。
「……私の素性はご存知ですよね?」
「もちろん。基地内では知らない方が珍しいくらいでしょう」
「私、元の世界では全然モテなかったのに……」
 不可思議なモテ期に首をかしげている深花を見て、デュガリアはくすくす笑う。
「それはあちらの男達の目が節穴だっただけの事。我々リオ・ゼネルヴァ生まれの男にとって、あなたの容姿は非常に魅力的に映りますよ」
 深花がどういう女なのか簡単に試そうとして抱きすくめてみたら、意外な事が聞けてしまった。
 この女、実に面白い。
 性的な分野をどうこうしたいというのではなく、人間としての深花が面白いし興味深い。
「……話が逸れた。あなたを呼んだのは、弁明のためだったのに」
「弁明?」
 きょとんとする深花に、デュガリアは笑いかける。


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