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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-14

「だからこそ、だ」
 ジュリアスは、呟いた。
「俺達以外の誰かを連れていくなら、肝が座っていて事の次第に納得のいってる奴を選ばなきゃならない」
 どちらかを満たしていない人間を連れていき、忍んで歩いている最中に恐怖に駆られていきなりパニックでも起こされた日には、自分達の帰還すら怪しくなる。
「……さらわれる前のフラウさんって探知器みたいだったけど、逆は可能なの?」
「下位神機が上位神機の探知をするって事か?まあ可能だと思うが……」
 なにやら心当たりがありそうな深花の様子に、ジュリアスは口を閉じて彼女が結論を出すのを待った。
「……一人、いるじゃない」
 しばらくして、深花は言う。
「あなたやティトーさんに喧嘩を売るくらいに度胸が座ってて、『人手がご入り用でしたらぜひ一声おかけください。損はさせませんよ』なんて言ってくれた人が」
 心当たりの人物に、ジュリアスは吹き出した。
「まぁ、確かになぁ……」
 笑いを堪えようとして、頬がぴくぴく引き攣る。
「しかもマイレンクォードのパイロット候補生でしょ?フラウさんの探索に、すごーく役に立ちそうじゃない?」


 上位神機と下位神機。
 その違いは、簡単に例えるとオリジナルとレプリカの関係に似ている。
 下位神機とは原初を司る四機から作られた複製に様々な力を加え、より容易な扱いを目的に作り出された物だ。
 そのほとんどは愚にもつかない粗悪品だが、中には力がうまい事作用して立派な戦力たりうる機体が出来上がる時がある。
 そういう物は二つに分けられ、新戦力として分配される事になる。
 神機のパイロット候補生は激しい戦いに耐え抜くだけの体を作ると同時に、それら配備された下位神機と契約を結んでこの地へ呼び出す事も期待されている。
 もちろんそれができない者とできる者がいるが、デュガリアは後者だった。
「……ほう」
 一通りの説明を受けたデュガリアは、たいして驚いた風もなく相槌を打った。
 いきなりガルヴァイラの執務室へ呼び出され、途方もない話を聞かされた割には薄いリアクションである。
 いい方に見れば膨大な危険を孕んだ極秘事項を打診されても動じない見事な度胸を見せてくれた、と表現できる。
「あんたの訓練成績は見せてもらった。剣術・弓術・救護技術・サバイバル技能、どれをとっても申し分ない」
 羊皮紙を綴じた薄いファイルを手の中で転がしながら、ティトーは言った。
「先程の暴言には目をつぶるとして、あんたに異議がなければフラウ救出のメンバーに加えたい」
 デュガリアは、肩をすくめる。
「経過はどうあれ、見初めていただいたのは名誉な事ですね」
 ジュリアス・ティトー・深花と顔へ順繰りに視線を張り付けた後、ザッフェレルとガルヴァイラ、最後に自分の上司を見遣る。
「で、救出作戦に僕が携わる事によって得る旨味はなんですか?」
 足を組み、尊大な態度でデュガリアは言った。
「上官命令による服従を強いるには危険すぎるから、このような打診という形をとったのでしょう?ならば僕が従軍するに価するだけの旨味を提示するのが妥当というもの」
「もちろん報酬の用意はある」
 ティトーが手を振った。
「当然、成功報酬だけどな。あんたが金に興味のある人間とは思えないが、まずは金子を三グエル袋に四つ。これは軍からではなく、俺が用意するささやかな謝礼だ。中身は金貨でも金塊でも、好きな方を選んでくれ」
 ささやかと言いつつ、出された報酬は数百万円……いっそ、一千万円に近いお金だ。


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