【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第三部・最終編〕-10
メカ・チョコパフェ生徒会長の口が大きく開き…歌声のような、超音波が周囲に響き渡る。
ルゥルゥルゥルゥルッ…キュイィィーン
次の瞬間…涼華の胴体が…スパッ…と、超音波の刃で寸断された。
(えっ!?)何が起こったのか、わからないまま…上半身と下半身に切断された、涼華のロボット・ボディが地面に向かって落下した。
同時に…合体を破られたヨルムンガルドと、フォンリルも、大地に激突して、火花が散った。
『き、きさまぁ!ロボットの合体中に攻撃したなぁ!裏切り者がぁ!』
暗闇長官の怒りに震える声に、チョコパフェ生徒会長は…ふんっと、鼻を鳴らす。
「そんなルールを守るほど、あたしは真面目な悪の幹部じゃないんでね…さあ、どうする?まだやるかい」
『おのれぇ…きさまらぁ!』
天空に暗雲が立ち込め…怒りに顔を歪めた暗闇 五郎の姿が、立体映像で浮かびあがった。
『今回は、我々の負けだ…だが、必ずおまえたち悪の組織を根絶やしにしてやる!再び、強力な正義の組織を再構成してもどってくるからな!わっはははは…』
不気味な笑いを轟かせ…暗闇長官は消えた。
静寂の中…クモ女が、口を開く。
「勝っちゃいましたぁ…戦慄地球防衛軍にフェアリー☆テールが、勝利しちゃいましたぁ♪」
その言葉に、戦闘要員たちは、抱き合って歓声をあげた。
前代見聞…悪が正義に勝利した瞬間だった。
ただ、一人…鈴美だけが、寸断されてロボットの機能が停止した…姉、涼華の残骸を呆然と眺めていた。
その夜…戦慄地球防衛軍の本部のあった、富士の樹海から、巨大なハマキ型のUFOが宇宙へと飛び出していった。
それから…数日後、フェアリー☆テール基地内で鈴美に与えられた、個室にクリオネ首領が訪ねてきた。
《まだ、落ち込んでいるの…》
ピンク色の花柄のシーツが、かけられたベットの端に座った、クリオネ首領は…枕元に置かれた植物怪人のヌイグルミを弄びながら言った。
椅子に座った鈴美は、沈んだ表情で首領を見る。
《元気だしなさい、って言っても無理な話しかぁ》
クリオネ首領は立ち上がった。
その時、ペパーミント伯爵が部屋に入ってきた。
「首領…ちょっと…」
ペパーミント伯爵が、なにやら首領に耳打ちをする。
《そう…鈴美ちゃん、あなたに会わせたい人がいるの》
「会わせたい人…?ですか?」
誰だろう…と、鈴美が思っていると、ペパーミント伯爵が部屋のドアを、微笑みながら開けた。
「入って…」
部屋に静かに入ってきた、人物を見て鈴美は、驚きの声をあげた。
「涼華、お姉ちゃん!?」
それは、ロボットにされて寸断された姉の涼華だった。
「どうして??」
「それが…あたしにも、さっぱりわからないのよ…気がついたら、こうなっていたの?」
涼華は、不思議そうな顔をした。
「どうでぇ…フェアリー☆テールの科学力もたいしたもんだろう」
涼華の後ろから、柳川教授が顔を覗かせる。
「柳川教授!?」
「棟梁〔とうりょう〕でいいぜ…鈴美ちゃん」
「どうゆうコトですか?いったい?」
「おうっ、これでぇ…」
と、柳川教授が紙袋から取り出した物に、鈴美と涼華は息を呑んだ。
そこに、透明な円筒ケースに入った涼華の生首があった。
「この生首から、クローンで再生した体に記憶を移して、復活させたんでぇ…どうでぇ、とてもクローンした体だとは思えねぇだろう」
「ク、クローンなんですか?この体…」
涼華は複雑な表情で、自分の体を触って確認した。
「あの、翔って小僧に注入されたナノマシンも、消滅させておいたぜ…本人は、操られていた時のコトは何も覚えていねぇけどな…」
鈴美は、感激で涙が出た。