それぞれの行き着く場所-9
「……あっ……三田村くん……っ」
ごく僅かな刺激に、自分でも信じられないほど肉体が反応する。
「…………あいり…ちゃん……っ……」
喘ぎ声に触発されたように、三田村の手のひらがローブの上からあいりの背中をまさぐり、熱い唇が貪るように首筋を吸い上げてきた。
「んっ……あぁっ……」
男物の香水に混じる微かな汗の匂いに頭がクラクラする。
衿元を大胆に拡げながら移動していく三田村の唇。
鎖骨がほとんどあらわになったところで、たまらず首を反らせた。
「みっ……三田村……くん……」
肝心な部分にはひとつも触れられていないのに、下半身がもう熱く湿り始めているのがわかる。
もっともっと三田村に乱されたくて――。
もっともっと三田村に蹂躙されたくて―――。
身体が急速に発情していく。
「……部屋……入っても……ええ……?」
苦しそうな声に夢中でこくりと頷くと、三田村はあいりの身体を抱きしめたまま靴を脱ぎ捨て、もつれる足取りでベッドのほうへと移動した。
スーツのジャケットを床に放り投げ、スプリングのきいたマットレスの上に崩れるように倒れ込む。
三田村はあいりの上に真上から覆い被さり、いきなり唇を重ね合わせてきた。
「……ん……んっ……」
むしゃぶりつくような荒々しいキス。
上下の唇を交互に強く吸われ、開いた隙間から柔らかく湿った舌が侵入してくる。
全身の意識が唇に集中して、頭がのぼせてしまいそうだ。
三田村の舌があいりの舌をまさぐり、求めるように絡みつく。
二人の唾液が口の中で混ざり合うのがわかる。
『………三田村くんと、キス……してる……』
今起きていることが信じられずに、あいりは薄目を開けてもう一度相手の顔を確認した。
それを感じとったかのように、三田村はあいりの手をぎゅっと握りながら更に深く唇を重ねてきた。
手のひらから伝わる優しい温もりが、空っぽだったあいりの心をじんわりと満たす。
初めて直接身体で感じる三田村の男性らしさに、あいりはうっとりと酔いしれた。
例えこの交わりが、なにも生みださない空虚なものだったとしても―――きっと私は後悔しない―――そう思った。
「……あいり………あいり……ちゃん………」
うわごとのように何度も名前を呼びながら、情熱的に舌を絡めてくる三田村。
時折漏れるため息のような吐息が、緊張のせいか微かに震えている。
「ほんまは……ずっと……前から……こう……したかってん……」
「………え……っ……」
思いもよらぬ言葉に、心臓がドキンと跳ね上がる。
「いや……やっぱ………そんなん……言うたら……アカンな……」
酒の力を借りてここまで来たものの、彼女への背徳感で苦しんでいるのだろうか。
三田村の表情には深い苦悩が浮かんでいた。
「……私……後悔……しないから……」
目の前の三田村が幻のように突然消えてしまいそうな気がして、あいりは夢中でその首にしがみついた。
「……だから……お願…い……」
それに答えるように、三田村が再びあいりの首筋にキスを落とす。
「……アカン……やっぱ……抑え……きかへん……」
同時に右手がバスローブの紐を解き、あいりの身体は唯一の締め付けを失った。