【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第二部・陰謀編〕-5
暗闇長官と、翔が出されたラーメンをすする。
「おいしい♪おいしいです!麺とスープのバランスが絶妙ですね!」
翔が絶賛する。
「だろう…そうだ、極神くん久しぶりに、君の変身した姿を見せてくれないか…」
「いいですよ…変身ポーズ忘れていないと、いいんですが」
腰のエプロンを外した、ラーメン店主、極神 狂介は厨房の中で構えた。
「粘着!」
厨房内にスパークが走る…チャーシュウが空中に舞い…煮玉子が弾け飛んだ。
0・05秒のスピードで、物質電送された装甲格闘スーツが、極神 狂介の体に武装された。
「武装戦士!ゴクガミー!参上!!」
ラーメン屋の厨房で、メタリックな輝きを放つ…ヒーロー戦士がポーズを決めた。
(決まった…やっぱ、オレって…ヒーロー)
極神 狂介は、メタリックなマスクの下で、悦に浸る。
そんな、ポーズを決める狂介に、麺を口に運びながら翔が…カウンター席から、狂介の下半身を覗いて恐る恐る、言った。
「あのぅ…下半身…ラーメン店主のままですけど…」
「なにっ?げっ!?」
翔の指摘で、足元に目を向けた狂介は、思わずカエルが潰れたような声を出す。
変身したのは、上半身だけだ。
「しまったぁ!また、物質電送が不完全だったぁ!」
頭を抱える狂介を、暗闇長官は…呆れたように首を横に振った。
「変身ポーズの腕の角度が、十度ほどズレていたぞ…本部に登録してある、変身ポーズを正確にやらないとな…」
そう言った、暗闇長官は、なにやら思案の素振りをみせた。
「そうだ、極神くん…少し協力してくれないか…実は、今…合体を渋っているロボットがいて困っているんだ」
「そんな、根性無しのロボットがいるんですか?いいですよ…オレで役に立つコトなら」
暗闇長官は、レンゲでスープをすすりながら…ふふふっ…と、悪巧みの笑みをもらした。
その頃…妹、鈴美の方は…。
「あたしの歓迎会ですか?」
フェアリー☆テールの基地通路で鈴美は、ペパーミント伯爵から『歓迎会』の誘いを受けた。
「まだ、やってなかったからね…今度の金曜日の夜…居酒屋の二階を予約したいけど…いいかな?」
「はい、別に予定は無いから出席できますけれど…悪の秘密結社が、都内の居酒屋を貸し切りしても、大丈夫なんですか?」
「んっ?歓迎会の費用は、首領がすべて出してくれるから…鈴美ちゃんは、心配しなくていいよ」
そんなコトを心配しているんじゃなくて…と、鈴美は思った。
「じゃあ、金曜日の夜…八時に『居酒屋・悪の花道』に現地集合、というコトでいいね」
鈴美は、複雑な気分でうなずいた。
金曜日の夜──手渡された地図を頼りに、幹部服のまま、居酒屋の二階に到着すると。すでに、顔馴染みの、フェアリー☆テールの面々が座敷に集まっていた。
「ようっ!きたなぁ、本日の主役!」
捻りハチマキ姿の、天才科学者…柳川教授こと、通称・棟梁〔とうりょう〕
「鈴美さーん♪こっちこっち♪」
制服姿の、怪奇・クモ女。
「あの書いた地図で、場所はわかったかな…?」
金髪で黒マント姿の、ペパーミント伯爵。
「すいません、わたしたちまで、呼んで頂いて…」
食堂で会ったクマさん〔月ノ輪クマ怪人〕と、赤ちゃん〔レッサー・パンダの怪人〕を抱いた…その奥さん〔人間〕。
テーブルの端には、銀色のゴテゴテした、幹部服に身を包んだ。チョコパフェ生徒会長が、アグラをかいて座り。
「ふんっ、あたしは招待されたから、忙しいけれど…来てやったのよ」
と、毒づいていた。
「さあっ…座って座って」
ペパーミント伯爵に、促されるままに、席に着く鈴美…座敷は悪の組織とは、思えないほど…ほんわかとした、雰囲気が漂っている。