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【ロケットパンチを君の胸に♪】
【コメディ その他小説】

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【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第二部・陰謀編〕-6

 鈴美は、テーブルの上に並べられた、コップと小皿の数を確認する…あと、一人分の席が空いていた…。

「あのぅ…戦闘員の龍彦さんも、来るんですか?」
 鈴美は、ペパーミント伯爵に聞いてみた。

「残念ながら『への二十番』は、基地で待機中だ…巨獣【ミルフィーユ】は、歓迎会に出たがっていたが。さすがに出席は無理なので、諦めてもらった…」
「そうですか…」

 それなら、誰が来るんだろう?鈴美の脳裏に、ある海洋生物の姿が浮かぶ。
(まさかね…来ないわよね…クリオネだもん)

 と、鈴美が思っていると…階段をトントンと、上ってくる足音が聞こえた。

《ごめーん、道が混んでいたから…遅れちゃった》
 お座敷に…人間大の【クリオネ】が、本当にやってきた。
「し、首領…!?」
 さすがに、鈴美の口が…ぽかーんと、開く。
《間に合ったみたいね…》

 フェアリー☆テールのクリオネ首領は、空いていた席に着いた…奇妙な光景だった。

《じゃあ、固い挨拶は抜きで…歓迎会をはじめましょう…鈴美ちゃんと、クモ女は、まだ未成年だからジュースで乾杯ね…》

 乾杯!!と、言って…和気あいあいの雰囲気の中で、鈴美の歓迎会がはじまった。
 運ばれてきた料理と酒も進み…歓迎会も中盤になって盛り上がる。

「きゃははは…鈴美ぃ、食べているぅ?きゃははは…」
 酔っぱらった、チョコパフェ生徒会長が鈴美に話しかけてきた。
「は、はい…た、食べています…」
 妙に明るくなった、チョコパフェ生徒会長の変貌ぶりに鈴美は、面くらった。

「よろすぃ!若いうちは楽しまなくちゃダメだぞぅ!困ったコトがあったら…チョコパフェ生徒会長のお姉さんに、なーんでも相談しなさーい!きゃははは」
 チョコパフェ生徒会長は、笑いながら鈴美の背中をパンパンと、叩いた。
 この人…お酒入ると変わるんだ…と、鈴美は思った。

「どうですか?首領…ここらで誰かに余興でもやってもらっては」
 静かに飲んでいた、ペパーミント伯爵が言った。
《そうねぇ…じゃあ、最初に首領のあたしが、余興の口火をきりますか》 そう言って、ほんのり薄ピンク色に染まった…クリオネ首領が、立ち上がった。

「よっ!待っていましたぁ」
 柳川教授の拍手に…首領はペコリと頭を下げる。
《では…とっておきの芸を…》
 そう言って、首領は背中を丸めた。

《脱皮!!》
 バリッ…と、鈍い音がして、クリオネの背中が割れた…首領は、プルプルと体を震わせた。
(なっ…!?)
 全員の表情が…凍りつく。
《う〜んっ…えいっ!》

 ムニュゥ…スッピョーン。透明な薄皮が一枚剥けて…中から脱皮した、首領が出てきた。
 抜け殻となったゼリーの、ような皮が…クリオネ首領の足元で、ピクッピクッ蠢いていた。

《以上!脱皮芸でした!》
 あまりにも、エグい光景に…場の空気が凍りつく。
《あれ?今の受けてなかった?一晩考えた芸なんだけど…》
「い、いや…受ける受けないの問題じゃなくて…」
《じゃあ、今度は『分裂』を…》
 首領の頭が、ムニュムニュと分かれはじめたのを見て…さすがに、ペパーミント伯爵が止めた。
「や、やめてください!面白かったです」
《そう?楽しんでもらえた…》
 首領は、分裂を思いとどまる。愉快な悪の組織だった…そんな、フェアリー☆テールに鈴美は安らぎを感じていた。

(あたし、悪の秘密結社に入って、良かった…
 鈴美が、しみじみと仲間と出会えた幸せを噛み締めていた時…血相を変えた、戦闘要員が一人…座敷に駆け込んできた。

「た、大変です!」
 全身黒タイツに、覆面姿だったが…胸に刺繍された『への二十番』の文字で、龍彦だとすぐにわかった。

「どうしたんでぇ、今日は基地で待機じゃなかったのかい?」
 柳川教授が赤ら顔で、尋ねる。

「みなさん、こんなところに集まっている場合じゃないですよ!!これを見てください!」
 と、龍彦は持参した小型テレビのスイッチを入れた。

 一同はテレビの画面を、覗き込む…画面には白い円錐形の覆面を被った、三人の人物が映っていた…。


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