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【ロケットパンチを君の胸に♪】
【コメディ その他小説】

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【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第一部・受難編〕-5

 その頃…妹の鈴美の方は、フェアリー☆テールの首領と謁見〔えっけん〕していた。

《あなたが、鈴美ちゃんね…頑張ってね》
 謁見の間で、巨大な水槽の中を泳ぐ【人間大のクリオネ】が喋った。

《あたしが、見込んだんだから…鈴美ちゃんは、いい悪の幹部になるわよ…期待しているわ》
「は、はい…頑張ります」
 首領のクリオネは、ヒレを動かして…優雅に水槽の中を泳ぎ回っている。
 鈴美は…こんなワケの分からないモノが組織の頂点に…と、内心呟いた。
「首領…鈴美ちゃんに配属する怪人と、怪獣や巨大ロボットはどうしますか?」
 かたわらに立つ、ペパーミント伯爵がクリオネに尋ねた。
《そうねぇ…怪人は【怪奇・クモ女】なら、鈴美ちゃんと年齢も近いから、気が合うんじゃないかしら…怪獣はリス巨獣の【ミルフィーユ】…あの子、今回のコトで責任感じているから…戦闘要員は【へ組】を二十名ほど配属してみて…》
「わかりました…」
 ペパーミント伯爵と鈴美は一礼をすると、謁見の間を後にした。
「首領って…クリオネなんですか?」
 通路をあるきながら、鈴美はペパーミント伯爵に聞いてみた。
「うん、いい質問だね…実のところ首領の正体は、我々にもわからないんだ…」
「そうなんですか…」
 二人が会話をしながら、歩いていると…交差する通路を、ブレザーの制服を着た女学生が横ぎった。ペパーミント伯爵は、そのチェック柄のスカートをはいた女学生に声をかける。

「ちょうどいい所で会った…おぉい【怪奇・クモ女】」
「なんですかぁ?ペパーミント伯爵さまぁ」
 呼びとめられた女の子が、トコトコと鈴美たちの方にやってきた。

 鈴美は、えっ!?と、小さい声をもらす。怪奇・クモ女と呼ばれた女の子は、鈴美より少しばかり年下のように見える。
「今、首領から君の配属先が言い渡された…ここにいる、幹部候補の鈴美ちゃんが、今日から君の直轄上司だ」
「わぉっ♪あたしの配属決まったんですか♪よろしくお願いしまーす、怪奇・クモ女でーす」
 女の子は、無邪気に頭をペコリと、下げた。

「あと、巨獣ミルフィーユと、へ組の戦闘要員も配属されたから…鈴美ちゃんに案内してやってくれ…ボクは別部署の『幼稚園バスジャック作戦』の、進行状態がどうなっているか見てこないといけないから…」
「わっかりましたーっ」
 クモ女の少女は、元気良く返事をして、ペパーミント伯爵はその場から、去っていった。

「ついて来てください…怪獣倉庫に案内しますから…」
 鈴美とクモ女は、歩きながら会話した。
「本当にあなた、怪人なの?そうは見えないなぁ」
「えへっ、普段は人間の姿しているんです…この姿の方が破壊活動する時には、便利なんですよ…証拠見ますか?」

 そう言って、クモ女の少女は、プリクラの貼られた手帳を鈴美に見せた。そこには、単眼が横に並んだ毛むくじゃらの怪物が、戦闘員と一緒にピース・サインを出して写っているプリクラが貼ってあった。

 鈴美は、思わずめまいを覚えた。
「ほ、本当に怪人なのね…」
「はいっ、ついでに現役の女子高校生もやっています…あ、これは学校の方には秘密ですよーっ…えーと、幹部候補の…」
「鈴美でいいわよ…歳もそんなに変わらないから」
「じゃあ、鈴美さんって呼ばせてもらいますね」
 二人はエレベーターに乗って…地下深くにある【怪獣倉庫】にやってきた。

 倉庫の中には、いろいろな怪獣が檻の中で、自分の出撃する時を待っていた。
 その中に、あの口から火を吹く巨大なリスの怪獣もいた。
「ミルフィーユ、あなたの新しい上司よ…」
 クモ女の声に、背を向けていた、巨獣・ミルフィーユはチラッと鈴美の方を見てから…また、背を向けて、なにやら呟きはじめた。
《ごめんなさい…ごめんなさい…》
 かなり、気弱な怪獣のようだ。クモ女はやれやれと、肩をすくめる。
「まだ、気にしているの…鈴美さん、この子…鈴美さんを傷つけたコト、ずっと気にしているんですよ」
 鈴美は、ミルフィーユの檻に近づいた。

「あのぅ…あたし、こうして元気だから…もう、気にしないで…一緒に頑張って悪の道を極めよう…ネ」
《本当?もう大丈夫なの?》
 ミルフィーユは、つぶらな瞳で鈴美を見た。
「大丈夫よ、ミサイルだって、発射できるようになっちゃたんだから…ほらっ」
 鈴美の両肩が、ガシャンと開き…並んだ小型ミサイルの発射口が、露出した。

「目からは殺人レーザーだって出ちゃうんだから…すっごいでしょう、だからあなたも元気出して」
 ミルフィーユが、クスッと笑った。
《うんっ、ボク頑張ってみる!》


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