性そして生命-6
「―――産むんやろ?」
「し……真ちゃん……こ…この子……は……」
「俺の子、――――やんな?」
慶子の口から痛々しい言葉が出る前に、三田村は必死でそれを遮った。
「………それは………」
慶子はひどい拷問に耐えるような表情で眉をひそめ、目を閉じた。
「―――その子は俺の子や。もう、今俺がそう決めた」
「……真ちゃん……?」
「それが一番ええやろ?そう思わへんか?」
言いながら胸がズキリと痛んだ。しかし、ここを避けては通るわけにはいかないのだ。
「その子が生まれて―――万が一ほんまの父親が俺やないってわかったとしても……一緒に育ててくれるような相手と……ちゃう……やろ?」
「……真ちゃ……」
慶子は完全に打ちのめされたような表情で、口元を両手で覆った。
指先がぶるぶると小刻みに震えている。
「――――慶子」
もう怯える必要がないということを伝えたくて、もう一度慶子を強く抱きしめた。
「―――慶子は、俺の子やと思たんやろ?せやから『産む』って決めてくれたんやろ?」
どんないきさつがあろうと、慶子の胎内に命が宿り、彼女がその子を三田村の子だからという理由で産むならば、その父親は自分でしかありえないと思う。
「慶子がそう思うんなら、俺はもうそれで十分や。俺が父親やったら――――あかんか?」
慶子がゆっくりと顔を上げた。
痛々しいほどにやつれた頬。
重過ぎる秘密をたった一人で抱えこんだまま、誰にも頼らずよくここまで頑張って来たと思う。
三田村は深呼吸をして呼吸を整えると、慶子の肩を抱きながらはっきりとこう言った。
「慶子――――結婚、しよう」
――――俺は今
どんな顔をしてるんやろう。
薄汚い心の奥底にある、迷いや、戸惑いは、上手く隠せてるんやろうか?
何故か一瞬、藤本あいりの媚態が頭を過ぎった。
『……あっ…あぁっ……』
椅子に身体を縛り付けられ、濡れた肉壷に玩具を挿入されながら悶えるあいり。
『……助けて……』
触手のようなロープが、更にギリギリとあいりの肌を締め上げ、何人もの裸の男がその肉体にむしゃぶりついていく。
『あっ……あぁっ……三田村くんっ……好き……好きなの……たす……助けて……』
『……あいりちゃん……』
三田村の中に、じわっと苦い感情が広がった。
膨らんでいく妄想を振り払うように、慶子を抱く手に力をこめる。
「……一人にしてごめんな」
「……うち……のほうこそ…勝手なこと……ばっかして……」
慶子は、張り詰めていた糸がぷつんと切れてしまったように、両手で顔を覆って鳴咽を漏らし始めた。
しゃくり上げる度に泣き声は大きくなり、激しく全身を震わせながら、慶子はその場に泣き崩れた。
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