第4章 展開-17
律子だって、これほどまでの窮極の喜びを味わえる身体を持っているのです。律子の失禁に似た状態を見た時、律子の従順さを愛でているだけでは却って律子に失礼なのかも知れない、と思うと同時に、意識を失っていく律子の、その瞬間に見せた、無心で、清らかで、気高いとも言える顔を見たとき、私自身も感動の鳥肌を立てておりました。羨ましさがなかったとは言いませんが、今までとは違う律子の果てて行く顔を、もっともっと見たいと思うようになったのです。
翌朝律子は、私を見ると恥ずかしそうに真っ赤になりました。<マットレス新しくしなきゃいけないわね>と言うと、私にしがみつき、はげしく頭を振りながらもその瞬間が思い出されるのか、律子の腰が砕け、その場でしゃがみこむほどの歓喜だったようです。
「私……」
「そんなによかった……?」
「お姉ちゃん……あれは危険……。私狂っちゃうかも知れないもの」
「でも……よかった?」
「ええ……だけど……私ばっかり喜んで、お姉ちゃんが……」
「それを言わないで……。リッコが私の分まで行って。リッコのあの時の顔がとっても素敵だからもっと見たいの」
奥深い性の喜びを知ってからの律子は、自分の綺麗さに色気が加わってきたことを自覚しているようでした。それが会社内での男たちの目をも奪うようになると、上辺だけではない自信につながっていったのでしょう。責任のある仕事を任されるようになると、そのいきいきとした立ち居振る舞いが彼女をますます美しく見せていくようでした。
私は、律子の望むままに高級な衣服を整えさせ、エステにも通わせ、磨き上がっていくのが楽しみでした。自分の無精さを脇に置いて律子を見ていると、原石の隠れた美しさを見つけて、美しい女性に変身させる喜びを知ったのです。
無垢な少女のような顔で眠る律子を胸に抱きながら、ふと、自分が磨き上げた美しい女性たちに囲まれている自分を夢想したりしていると、これは、大奥に君臨する男みたいだと、思わず自分の乳房の膨らみを確かめてホッとしたりするのでした。
その夢想は、律子の愛をないがしろにする私のはしたない性格のせいかも知れない、と反省したりしたのですが、私の不確実なイメージが、実は一つの形となって表れたものだったのです。
律子が絵美を伴って来たとき、ちょうど良い機会だと二人に私の計画を話しました。律子の会社のネットワークを軸にして、モデルクラブを作ろうと考えたのです。
企業、例えば下着やアパレルメーカー、ジュエリーメーカーなど、女性が持つさまざまな購買欲を満たす関連企業に、巾広い年齢層のモデルを擁して、ショーモデルから離れた広告用素材として女性モデルを派遣する。この需要は果てしなくあると思いました。
律子と絵美は、私の考えを直ぐに理解し、私が考える以上の具体的な状況を様々に描いてみせるのでした。
私たち三人は鴻作おじさまに会い、私の計画を話して賛成して頂きました。会社設立や経営の実務の采配は、おじさまのネットワークにお任せすることにして、すぐに準備に取りかかることを決めました。
銀座のビルのワンフロアを借り切って、三人はいきいきと準備を整えました。
社長には、渋る律子を説得して据えることにし、役員には小郡絵美、橘鴻作、私は筆頭株主の相談役の位置に止まりました。
定款もできあがり、会社は順調に滑り出しました。おじさまを交えた4人で、一次的段階として20人ほどのモデル候補を面接し、かなり完成された美しさを持っている女性を雇うことができました。応募要項には、プロのモデルを除外しておりましたので、15才から30才までの一般の人を採用しました。
プロというより、プロらしくないプロにするための教育は,モデルたちを使いこなした経験のある絵美が、モデル養成の専門家を喚んで講習会を開いたり、身体の内部からシミひとつない美しい肌を整えるために、専門のエステティシャンも雇いました。食堂を備え、常に身体を清潔に保つシャワー室、サウナ、スチーム装置、エステ室などなどの配置、受付から接客室と、銀座のモデルクラブらしい高級感溢れる室内装飾は、律子と絵美のセンスが発揮されて完成されていきました。
こうして実働までの2ヶ月ほどは、あっという間に過ぎました。
モデルを含む総勢50人ほどの会社は、具体的な宣伝活動に入りました。まだ未成熟なモデルであっても、美しさは十分でした。ポートフォリオの顔・全身・水着の3枚組の紹介写真は、おじさまが率いる外部デザインチームの画像処理で見応えのあるものに仕上がりました。
社長になった律子の張り切りようは見ていて微笑ましく、でも、クライアント確保には、絵美とともに容赦なく私も引っ張り出されました。私も、いままでのような怠惰は許されず、主に、モデルたちの食事療法も担当させられました。モデルの中には、綺麗な顔立ちでありながら、高齢、といっても、20代後半なのですが、裸になるとやや脂肪が気になる子が何人かいたからです。
エステ室には3人の女性エステティシャンがいます。そのうちの一人が私専用のエステティシャンとして起用され、律子の命令で私も全身マッサージを毎日受けるようになりました。
絵美は、近い将来はこのエステ室を独立採算性にして、モデルクラブの名前を持つ一般女性をも受け入れるエステティック・サロンにする、と張り切るように、律子と絵美はのびのびと会社経営に乗り出しました。