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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第4章 展開-16

4、律子の愛

 家に帰ると、律子が玄関で正座して待っておりました。
「お姉ちゃん、すごいシャネルの匂いがする……」と言ってベソをかきました。
「フランス人の挨拶よ、抱き合ってキスするでしょ? それだけのことよ」
 私はベソをかいている律子を見て、今すぐ律子が欲しい、と思いました。モヤモヤと胸の中に渦巻いている不快感を直ぐにでも拭いたかったのです。でも、少し冷静にならなければ律子に悪いと思い、さりげなく部屋着に着替えて夕食の用意を始めました。まだ、不快なフランス語が耳について離れませんでした。側で手伝っている律子の今にも泣き出しそうな青白い横顔を見ると、やはりたまらなくなって、<リッコ! リッコの蜜を頂戴!>と言ってしまいました。
「お姉ちゃん……ホテルで何かあったの……?」
「別になにも……だけどあのフランス女、翔子大嫌い。迫ってきたから逃げてきたのよ」
「ああ良かった。私、心配で、心配で、あんな綺麗なモデルさんにお姉ちゃんが抱かれているんじゃないかと思うと、居ても立ってもいられなかったの」
「なにが綺麗なもんですか。リッコの方が、ズットズット綺麗よ」
 その場で律子を床に寝かせてパンティーを剥ぎ取ると、律子の清潔な匂いのする襞に唇を埋め、強く吸いました。律子のソコから次第に蜜が溢れて出し、私の口中に流れ込んできました。
 律子は私の髪を梳りながら自分の乳房を揉み、次第に喘ぐ声を大きくしていきました。

 <ああ……果てたい。あの雲の上に行きたい……>この時ほど私の部分の無反応をうらめしく思ったことはありませんでした。
 私は、律子のソコに顔を埋めて泣きました。
「お姉ちゃん……ねえ、お姉ちゃん……どうしてそんに泣くの……? やっぱりホテルで何かあったのね……? ねえ。お姉ちゃん、泣かないで、どうしたのよ。言って。何とか言って……」
「あァァ……リッコの舌で雲の上に行きたいのよ。リッコの蜜を吸いながら、リッコと一緒に天国へ行きたいのよ。でも……でも……この身体が……そこまで来てるのに行けないのよ。だから悔しいの……」
「お姉ちゃん……ごめんなさい……。私ばかり楽しんでいたのね。お姉ちゃんの苦しみも知らないで、私はなんてバカだったの」
「リッコは悪くなんかないのよ。翔子のココがいけないのよ。幸せそうに果てていくリッコを見ているだけでいいって思っていたのに。翔子も行きたい。リッコに翔子の蜜を吸って欲しいのに、何も出てこないなんて……ああ悔しい。自分の身体が憎らしい! どれだけ美しいって言われたって、こんな不完全な身体なんか美しいわけがないじゃない。そんなこと言われたって何も嬉しくないの。意識が無くなるまで雲にのりながら、リッコに綺麗なお姉ちゃんって言われたら、どれだけうれしいか分からないのに……」
「私が下手なんだわ。お姉ちゃん……ごめんね、もっと勉強する……」
「勉強だなんて……どんな勉強があるって言うのよ!」
 感情をむき出しにして、興奮の極みが持てない嘆きを初めて言葉に出してしまった私を、律子は慰める術を持たず、私にしがみついて声を上げて泣くのでした。

 泣きじゃくる律子を強く抱きしめている間に、嵐のような感情が鎮まっていくと、私は、ミニョンの面影を追いかけていた自分の身勝手さを心の中で律子にあやまりました。
 その夜私は、シャワーを浴びてジネットの匂いを全て洗い流して、いつも受け身の律子にしては珍しい激しい愛撫を受けました。私の嘆きを聞いてしまったせいか、慣れない手つきと舌で、なんとか私の部分を感じさせようとしている姿はいじらしく感動的でした。私の全身を舐め回す律子の舌は、いつまで経っても少女がお皿を舐めるような単調さでしたが、その律子の素朴さに私は癒されていた筈だったです。私は心の中で謝りながら律子の柔らかな膨らみを揉み、固くなった部分を優しく指で転がしていると、私の襞に吸い付いたまま興奮の極みに達してしまうのでした。
 私だって律子を喜ばせる術に長けているわけではないのです。それでも律子は満足げに行ってくれるのです。その夜の私は、律子の一途さに絆されたのかも知れません。私の乳房を鷲づかみにして恍惚としている律子を抱きかかえ、キスをしながら初めて律子の体内に指を入れてみたのです。律子の体内は熱くたぎり、興奮でうねっている肉襞が私の指に吸い付いてきました。蜜が指の間で妖しげな音をたて、その蜜の海の中で指を泳がしていると、私を見つめる律子の目に涙が溢れてきました。
「翔子お姉ちゃん……わたし……」
「気持ちいいの?」
「お姉ちゃん……怖いわ……死んじゃう……どうしよう……」
 律子の内部にある私の指が抜けなくなるほど締まったかと思うと、小さな叫び声をあげ、私の腕の上部まで断続して濡らしながら、律子の身体から力が抜けていきました。
 私自身の深部さえ自らの指で確かめたこともなかったので、こんなにも熱く動き回るものかと、今ごろになって女性の身体の不思議さを知ったのでした。
 私の過去の未熟な経験を後悔するわけではありませんが、私に抱かれているだけで満足そうだった律子の純真さを、愛し合っていれば、セックスの喜びは愛情の表現の一部に過ぎないと決めつけていたのは、私の勝手な思い込みではなかったかと疑ったのです。たしかに、私の勝手な思い違いでした。
 絶頂感を窮極まで高めるテクニックはあるのでしょう。私にそれを追求しようという積極性がないのは、愛する者同士がセックスだけを欲しているわけではないのに、果てしのない欲望の坩堝に嵌ってしまうのではないかという怖さがあったからなのです。私だって、片時も離れずに繋がっていたいと思うほどの欲望があったとしても、余程の好色でない限り、そして、絶頂を知っているからといって、四六時中恍惚の世界に身を委ねていたいわけではなく、愛の時間を繋ぐ読点のようなものだと考えれば、それを怖れることはないことも分かっていながら、律子の従順さに慣れてしまっていたのです。


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