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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第2章 運命の人-5

「は?……いいえ。私、この眉いやですもの。わざわざ描くなんてこと……」
「それにその、長くて濃い睫毛。くっきりと描いたとしか思えない唇……」
 私は、ミニョンと一緒にいるときの自信は一挙に崩れ、以前のような弱気が出てしまったのか、無意識のうちに涙が溢れてしまいました。それを見た校長は、少したじろいだようになってから立ち上がり、私の側に近付いてきました。
「本当にお化粧はしていないんでしょうね」
と私を覗き込み、点検するように私の回りを嗅ぎながら一回りして、
「私にも、あなたがお化粧しているように見えますけれどねえ」
そう言うと、自分のポケットからティッシュを出して、<涙をお拭きなさい>と言われたので、私は、お礼を言いながらそのティッシュでゴシゴシと目を擦りました。これだけ擦れば、眉だって付け睫毛だって落ちるでしょう、と、少し腹立ち紛れの行為でした。さすがに校長にも分かったのでしょう。次に言う言葉が見つからなかったようで、元の席に戻って話題を変えました。
「あなたは……ご両親は離婚なさっている……お母様は、貿易商ね。何を扱ってらっしゃるの?」
「母の仕事のことはあまり存じませんけれど、ファッション関係だと思います。多分お洋服などをの……」
「ほほ……どうしてそう思ったの?」
「よく海外へ出張いたしますし、帰ってくると、ファッションショウはこうだった、とか、モデルはこうとか、デザイナーのセンスがどうとか、そんなお話をしておりますので……」
「なるほど。それでそういう関係の会社を持ってらっしゃる」
「はい……多分」
「ところで、同居されている人は……と。3人のお手伝いさんと、フランス人の女性……女性ばかりのお住まいなんですね」
「はい……」
「そうですか……ふーム……お手伝いさんはともかく、このフランスの女性、というのは、どのようなご関係の方?」
 私は一瞬心臓が収縮し、言葉に詰まりました。
「ミニョンはあの……」
「ミニョン?」
「あの……ミニョン先生には、私のお勉強を見て頂いています」
「ああ、ミニョンってお名前の家庭教師ってこと?」
「ええ……そうなんですけど・・・」
「けど……?」
「え、ええ。そうなんですけど、日本に留学されている大学生なんです」
「なるほど。ご親戚とか、ホームステイとか?」
「はい。私が小さい時から、何人か色んな外国の女学生さんが私の家に滞在しておりました。母は、そうした留学生の方の援助、ボランティアって言うんですか? それは、私の目から見ても良く面倒を見ているように思えます」
「なるほど……女人の館ですか。あ、ちょっと言い方が悪かったですね。お母様は……そのう……あ、いえ……いま、同居されているその方は、いつ頃から?」
「一昨年のクリスマスあたり……です」
「お母様は、外国語がおできになる?」
「はい。フランス語と英語はできると言っています。二人の会話は殆どフランス語です」
「あなたは、その会話は理解できますか?」
「いえ……殆どわかりませんけど、最近少し……あの……」
「お母様は、あなたにもフランス語が話せるようになってもらいたいと……?」
「それはどうか分かりません……」
「フランスの何処か聞いていますか?」
「はい。エクサンプロバンスと」
「ああ、知っています。私も研修で行ったことがあります。ラベンダーで有名な美しいところですね。そういえばあなた、ラベンダーの香りがしますね。その方の香水を使っているんじゃありませんか?」
「いえ、香水じゃありません。彼女のお家がラベンダー農場なので、定期的にラベンダーの製品が沢山送られてきます。それで、朝入るお風呂は、いつもラベンダーのアロマが入っていて、お手伝いさん以外は、朝、そのお風呂に入る習慣になっているんです」
「ああ、そういうことですか。強くはありませんが、仄かに良い香りがしますね。生徒はそれを香水と勘違いしたんでしょうけど……、それにしてもあなた、お化粧もしていないのに綺麗すぎます。先生もねえ、入学式当日に壇上から見て、あなたが真っ先に目に入った程でしたからね。背が高いってこともありますが、それくらい色が白くて輝いて見えましたよ。いえ、私は褒めているのではありませんよ。お化粧をしていると勘違いされても仕方がないと言っているのです。あなたは……と、成績もトップクラスのようですね。生徒たちは、そんなあなたがうらやましいと同時に、煙ったい存在なのでしょうかね。その天性の美しさは、女の子ならだれでも望むことでしょうが、あなたの年で、そこまで大人のような魅力を持っていると、もう、女の私だって胸が躍るくらいですからね。男の先生が浮き足立つのも無理ありませんねえ。あなたの罪ではありませんが……罪ですねえ。困ったわ。お風呂の習慣を止めなさい、とも言えないし、汚くなりなさい、とも言えないし……ホホ……。でも、どうしたものかしらねえ。美しいのも考えものねえ。こんなこと言えば、あなた自身の責任じゃないだけにかわいそうだけど。さて、どうしたものかしら……」
「…………」
「これがいじめに発展しなければ良いのですが、いろんな生徒がおりますからねえ……。伝統ある我が校にいじめがあってはなりません。分かりました。生徒たちをなだめる方法を考えてみましょう。今日はもうよろしい。教室へお戻りなさい」


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