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本当の優しさ
【青春 恋愛小説】

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本当の優しさ-13

「ゴメン....変な事聞いたね....忘れて今の....」
「そんな決まってるだろ!両方だよ!」
「えっ?」
「両方助ける!決まってるだろ!あっ....誤解するなよ!天城さんでなくて....理彩でも....いや....知らない女の子でも同じだからな!」
確かに和哉ならそうするだろう....でも....私の欲しい答えはそうじゃない....嘘でも....私を先に助けると言って欲しかった....私とデートしてるのだから....そう言って欲しかった....和哉の中の私の居場所は狭くなって来ている....そんな気がした....
「さっきから時間ばかり気にしているけど....何かあるの?」
再び和哉が時計を見た時思わず聞いてしまった....
「えっ?...ああ....駅前のライトアップされた街路樹や噴水を一緒に見たいなって....まだ早いけど....行こうか?」
「うん...」
カフェを出た途端冷たい風に身体が震えた。
「寒ぅ...」
「そうだね...」
「雪...降りそうだね?」
私は空を見上げて言った。「かもね...」
私は和哉の右手にしがみついた。
「どうしたの?」
驚いて尋ねる和哉に
「いいじゃない...寒いんだから....」
私達はそのまま歩いて駅前へと向かった。



今日の美咲はいつもと違っている....俺の右手に身体を密着させて甘えたような表情で俺を見つめている....天城さんの事が気になっているのだろうか....
もう15時を過ぎている....もし天城さんが来てたとしても....もう帰っているだろう....
駅前に歩いて行くと、噴水の前で女の子がからまれているのが見えた....
天城さん?その女の子が天城さんだと気付くと、俺は美咲の手を振り払って駆け出していた....
「私と千春さんが溺れていたら....どっちを先に助ける?」
さっき美咲が俺にかけた言葉....
「両方だよ....」
偽らざる俺の気持ち....
今も....天城さんだからではない....例えば理彩であったとしても同じ事をするだろう....美咲もわかっていてくれる....俺はそんな都合のいい事を考えていた....
「遅くなってゴメン!行こう!」
俺はそう言って、天城さんの左手を掴んだ。
「なんだ...彼氏がいたのか!」
そう言って男は天城さんから離れて行った。男に背を見せ振り返った時、美咲の姿が目に入った....美咲は...淋しそうな...悲しそうな....そんな顔をしていた....天城さんもそんな美咲の表情が見えたのだろう....俺に見せていた笑顔が一瞬曇ったように見えた....しかしすぐに笑顔を取り戻し、美咲の所へ走って行った....
「ゴメンね!美咲さん....」
美咲と天城さんの姿を見ながら思った....俺は一体何をやっているのだろう....誰も傷付けたくないからって....自分の正直な気持ちを見ないでいた....気付かないフリをしてきた....かえってそれが彼女を傷付ける事になると知らずに....答えを出す時が来たようだ....いや....答えはもう出ている....答えを告げる時が来ている....俺はそう感じていた....




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