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本当の優しさ
【青春 恋愛小説】

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本当の優しさ-14

駅のほうに歩いて行くと、駅前のライトアップされた噴水の前で何かモメているのが見えた。その途端和哉が走って行った。
よく見ると千春さんがからまれていた。和哉は千春さんの所に駆け寄り
「遅くなってゴメン!行こう」
そう言って千春さんの手を掴んで歩き始めた。和哉の顔を笑顔で見つめていた千春さんの顔が私を見つけると曇ったように見えた。
その瞬間何故和哉が時間を気にしていたのかわかったような気がした....
千春さんはすぐに笑顔を取り戻し私の所に駆け寄って来た。
「ゴメンね!美咲さん...実は友達と約束してたんだけど....すっぽかされたみたいで....帰ろうかなって思ってた時にあいつらにからまれて....木下君本当にありがとう!じゃあ邪魔者は消えるね!」
千春さんはそう言って笑顔を見せた....しかし....その笑顔はどこか淋しげだった....
「待って千春さん!」
何故そんな事を言ってしまったのか自分でもわからない....
「和哉はそれでいいの?」
「.........」
和哉は何も答えられなかった。
「今日....時間を気にしていたのは....千春さんの事が....気になっていた....そうなんでしょう?」
「........」
和哉は目を背けて私を見ようとしなかった....私は和哉の両肩を掴んで
「答えてよ!!」
そう叫んでいた....
「俺には....美咲が....」
和哉はそう言うのがやっとだった....
「まだそんな事言うの?自分でもわかっているんでしょう?本当は誰が好きなのか.....それともわからないフリをしているの?」
和哉は何も答えてくれなかった....
「和哉がやってる事って優しさでも何でもないよ!」和哉は黙って私を見ていた....
「そんなモノ....偽りの優しさなんて....要らないよ!!私は!!」
「.......」
「和哉の心の中に....私の居場所が無いなら.....冷たい言葉で傷つけてよ!!.....この胸を突き刺す....ナイフのような冷たい言葉で傷つけてよ!!」
「.........」
「和哉の事を....恨んで....憎んで....嫌いになれるように....和哉の事を忘れられるように....それが本当の優しさでしょ!!」
「.........」
「なんとか言いなさいよ!!」
「....ゴメン.....」
「私が欲しいのはそんな言葉じゃ無い!!」
「........」
「和哉が言えないのなら...私からフッてあげる....和哉なんか大嫌い!!」
和哉はずっと下を見ていた....
「サヨナラ!!」
私は踵を返して歩きビルの横の小路に入った。
そしてすぐにしゃがみこんで膝を抱えた。和哉が追いかけて来てくれる....
そんな僅かな希望を持ちながら....
しかしその僅かな希望もすぐに打ち消されてしまった.....街の雑踏に打ち消されながらも聞こえてきた和哉の言葉で.....



「木下君追いかけなくっていいの?」
千春は俺の右手を掴んで揺らした。
「今ならまだ間に合うよ!!木下君!!」
「いいんだ!」
「木下君.....」
「俺が傍にいたいのは...俺の傍にいて欲しいのは....美咲....北原さんじゃ無い!!千春!!お前なんだ!!」

俺は臆病者だ....初めて千春と付き合った時も....その後千春から別れ話を持ち出された時も....そして北原さんの時も....いつだって自分から自分の気持ちを言えないでいた....今だって....そのせいで北原さんを傷つけてしまった....


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