罰ゲーム 後編-2
暗闇の中に、確実にいるはずの愛しい男の気配を探りながら、あいりは強く唇を噛んだ。
「なんだよ?ここじゃ物足りねぇんなら外でやるか?中央公園あたりならギャラリーも多くてやり甲斐あるだろ」
坂田が、ゾッとするようなことを平然と言い放った。
これを拒めば、ゲームの内容がますますエスカレートするのは間違いない。
「どうする?ここでやるか?外でやるか?」
あいりがいくらどう悩んだところで、結局、選択肢などないのと同じことだった。
そして認めたくはなかったが、催淫剤の効果が高まっているあいりの肉体は、本当は今すぐにでも自分自身で思いきりまさぐりまわしたいほどに疼いてしまっているのだ。
それをなんとか押しとどめている理性と羞恥心の枷も、薬とアルコールのせいでいつもよりも明らかに緩くなっていた。
「――――や………やります……ここで……」
苦悶に顔を歪めながら答えるあいりの反応に、坂田は満足気な笑い声をあげた。
「ハハッ!……よーし!じゃあ早くやれよ!」
あのグロテスクなバイブレーターが、再びあいりの左手に握らされた。
その卑猥な形と太さに、子宮の奥がじわっと疼きを増す。
……もう…やるしかない……。
あいりは覚悟を決めてその場に座り直すと、右手をおずおずと左の乳房に這わせはじめた。
ニットの上から乳房全体をゆっくりと撫で回した後、乳首の先端を中指でそっとさする。
「……あっ……」
催淫剤のせいなのか、あるいは目隠しをしたままたくさんの男に見られているという異様な状況のせいなのか――軽く触れただけでびりびりとした快感が全身を駆け巡る。
「……んっ……ハァッ…」
あいりはほとんど無意識のうちに、その敏感な突起を中指と人差し指でギュッと挟みこんでいた。
痛いくらいに硬く勃起してしまった乳頭が、更に強い刺激を欲して疼いているのがハッキリと自覚出来る。
あぁ……私……。
何やってるんだろう……。
この部屋に来た時はこんなつもりじゃなかったのに……。
何人もの男の前で、目隠しをされたままオナニーさせられている自分――。
ふと我にかえると、自分のしていることの異常さに頭がクラクラしてしまいそうになる。
三田村はこんな自分をどんな顔で見ているのだろう………。
軽蔑しているのだろうか?
それとも……。
欲情……、
しているだろうか?
あいりはすぐそばでこの恥態を見つめているであろう三田村の表情を頭に思い描いた。
以前メンズフロアで目撃した三田村と理可のセックスシーンが蘇ってくる。
あの時―――獣(ケモノ)のように理可の身体をまさぐる三田村の眼差しに宿っていた情欲の炎――――。
あのたまらなく官能的な視線が、自分に注がれている……。
『……ああ…み……三田村くん……』
坂田に無理矢理飲まされた催淫剤が、いよいよ効果を発揮し始めていた。
肉体の感度が異常なほど高まっていくのと反比例して、意識はどんどん朦朧としてくる。
坂田と上野が何か卑猥な野次を飛ばしていたが、あいりの耳にはもう何も聞こえなくなっていた。
『下着……つけてないんですね』
あの時三田村が理可に言った言葉が、唐突に頭に浮かんだ。
『……言わないで……恥ずかしい……』
まるで自分が言われたような気がして、強烈な羞恥と興奮が湧き上がる。
『……ああっ……み……三田村くん……』
今度は三田村に触れられることを想像しながら指先で乳首を軽く引っ掻くと、さっきとは比べものにならない程の激しい快感が、肉体の奥底からせりあがってきた。
『……あっ……ああ……だめ…声が出ちゃう……』
一気に発情しはじめるあいりの身体。
悪魔のような薬によって極限まで高められた性感が、猛烈に疼き出していた。